札幌市民交流プラザ2階にある札幌文化芸術交流センターSCARTSは、美術館や劇場とは異なる、実験的かつ分野横断的なアートを対象とした施設。札幌市はユネスコ創造都市ネットワーク加盟後、文化政策に力を入れ、老朽化したニトリ文化ホールの代替劇場建設と共に、作り手や観客を支援する場としてSCARTSを構想。アートマネジメント人材育成やまちづくり支援など、独自の機能を持つ公的アートセンターとして誕生した。

表紙写真を見て、「ここ、行ったことがある!」と思った方もいるのでは。
2018年、札幌・創成川沿いに誕生した札幌市民交流プラザ。オープンから約7年が経ち、本格的な劇場空間でバレエやオペラを楽しんだり、カフェ併設の図書・情報館で調べものをしたり、札幌の都心部にある複合型文化施設として定着。同じビル高層棟にはHTB北海道テレビや本誌発行元の朝日新聞北海道支社、企画・制作の朝日サービスも入っており、読者と縁の深いスポットともいえるだろう。
そんな同プラザ2階に、アートセンターがあるのをご存じだろうか。札幌文化芸術交流センター SCARTS(スカーツ)。実はこのアートセンター、美術館とも、ギャラリーとも異なるそう。それでは一体どういう施設かと問えば、「明確な定義はない」というから驚きだ。身近にありながら、意外と知られていないアートセンターの魅力に迫りたい。
「美術館は博物館法、劇場は劇場法といった法律による定義があるのですが、アートセンターには、無いんです」。
2023年10月に行われた「北日本アートセンターミーティング」で、進行役の木ノ下智恵子さんはこう切り出した。SCARTS開館5周年を記念したこのイベントでは、秋田、仙台、青森の文化施設関係者が登壇。さらに、東京・合同会社文化コモンズ研究所代表の吉本光宏さんが国内外の事例を紹介した。
吉本さんによると、アートセンターといえば、食糧ビルを改装して若手作家の発表の場とし、森村泰昌や内藤礼ら現代アーティストを輩出したことで知られる東京・佐賀町エキジビット・スペース(1983~2000)や、1970年代に始まったビデオ・アートの発表に端を発するアメリカ・ニューヨークのThe Kitchen(キッチン)などが草分け。多くは民間主導で、活動内容や運営形態は多種多様だが、あえて定義するなら、「従来の美術館や劇場・音楽堂などの文化施設とは異なり、実験的かつ分野横断的なアートを対象に、作品の展示や公開より創造活動に力点を置く非営利スペースや拠点施設、及びそれを運営する芸術の専門機関・団体。歴史的建造物や倉庫、工場跡を改修して開設されるケースが多い」(吉本さん)といえるそうだ。
単なるハコモノとは一線を画した、先駆的で前衛的ともいえるアートセンターが、なぜ、札幌に出来たのだろう。
「札幌市は2013年に『メディアアーツ都市』としてユネスコ創造都市ネットワークに加盟し、翌年から札幌国際芸術祭を始めるなど文化政策に力を入れています。そうした中、老朽化したニトリ文化ホールの代替となる劇場が検討された時、作り手や観客を下支えする場所も必要ではという意見が出たそうです」と話すのは、SCARTS事業係長の松本桜子さん。
そもそも札幌市は1997年に札幌市芸術文化基本構想を策定。条例や基本計画を定め、文化行政を進めている。こうした流れの中でアートセンターのアイデアが生まれたのだが、特にこれといったモデルがあるわけではなく、「札幌の芸術関係者や学識者らを集めた検討会議で出た『こういう機能は必要だよね』という声をピックアップした結果、アートセンターの形に集約されたんです」(松本さん)。
機能とは、「相談・活動支援」「アートマネジメント人材の育成」「にぎわい創出や情報発信」など。つまり、まちづくりや文化芸術振興の一環として独自に生み出した新たな文化施設が、アートセンターの概念に通じたというわけだ。

関西出身の松本さんがSCARTSに関わったのは、開館1年前から。文化政策やアートマネジメント研究を専門とし、静岡文化芸術大学で研究員や奈良県庁で国民文化祭の企画などを経験。「札幌に面白そうな施設が出来ると聞き、(SCARTSを運営する)公益財団法人札幌市芸術文化財団の採用試験を受けたのが始まりです」と経緯を語る。
全国的にも珍しい公的アートセンターの立ち上げに携わった心境を聞くと、「実はどんな施設になるか見えない部分も多かったのです」と明かす。というのも、SCARTSが管理する部分は1階オープンスペース(SCARTSコート)と2階多目的スペース(SCARTSスタジオ)、1~2階の屋内広場(SCARTSモール)と同プラザ内に点在。主催や貸し出しでイベントを行うにしても、隣接する図書・情報館やカフェなどへの配慮が求められた。
それでも当初は、クラシックコンサートやアート系ワークショップ、大型展覧会、演劇、謎解き、コスプレなど、ジャンルを問わずさまざまな企画にどんどんチャレンジしたそう。その結果、「短い期間に同時並行で目の前の事業をこなすことで精一杯で、スタッフが疲弊してしまいました」と振り返る。
そこで、3年目頃からは一般利用とのバランスを調整し、SCARTS主催事業の〝核〟を模索。基軸として見い出したのが、活動支援と他団体との連携だった。
SCARTSが大切にしているのが、活動支援事業。なかでも、企画公募や助成金交付と共に注力しているのが、相談サービスの提供だ。
「たとえば、『大型作品を作って展示したい』という移住アーティストに人や場所を紹介したり、集客に悩む演劇人に広報セミナーを案内したり。開館から累計約560件の相談がありましたが、同じ内容は1つもありません」と松本さん。さらに、「個人でバイオリン演奏をされる方が『教室を開きたいけれど何をすればいいのか分からない』とお越しになり、教室作りに必要な届け出や生徒募集の広報の仕方などを伝えたこともあります」という。
そんなことまで?と驚くと、松本さんはこう続けた。
「アーティストだけでなく、市民の皆さんが創造性ある活動を続けることも、まちの豊かさにつながります。文化芸術に関する『やってみたい』『困っている』という相談事は、大歓迎です!」。

また、松本さんは、「後発施設として、これまで札幌で文化芸術活動を行っていた組織とつながりを持つことの必要性を感じ、札幌市内の専門機関との連携に取り組み始めました」と話す。
その一例が、2019年から4年間続いた「さっぽろウインターチェンジ」。これは、札幌国際芸術祭SIAF(サイアフ)を支え、実験的な活動を行う地元団体・SIAFラボと共に、札幌の冬を普段と違う見方で楽しもうというアートの試みだ。冬や雪にまつわる事象についてアートの視点で実験や開発などを行い、SCARTSが企画内容に積極的に関わりながら協働するプロジェクトとなった。
また、北海道大学の科学技術コミュニケーション教育研究部門・CoSTEP(コーステップ)との連携も大きなヒントになったそう。
取材した2月中旬、その北大CoSTEPとの共同プロジェクトの成果発表展「荒木悠 双殻綱:幕間」が開催されていた。松本さんは「若い世代のアートとサイエンスに対する探究心や感性を育むことが目的なので、参加者の学びにつながることがゴール。今後は、アートを通して、多角的に物事を捉え、創造性を広げるような人材育成に力を入れたいです」と期待を寄せる。
SIAFやCoSTEPといった地元の団体とつながり、クリエイティブな発見や驚きを提供することは、まさにアートセンター SCARTSの役割といえるだろう。
市民との接点でいえば、先述した公開型トークイベント「アートセンターミーティング」も、アートセンターの可能性を探る貴重な場といえる。3度目となる2024年度は、アートの視点にこだわらず、本を介した地域の交流拠点に焦点を当て、図書・情報館、青森・八戸市、東川町の施設関係者を招いて開催された。
実は筆者も、「アートセンターミーティング」を通して「SCARTSってこんなに面白い施設なんだ!」と再認識した一人。以来、アートの展示にも積極的に足を運んだり、「こんなイベントをしてみたい」という知人に相談サービスを案内したりしている。
ただ、トークで指摘されたのが「アートセンターは分かりにくい」ということ。確かに、「SCARTSといえばこれ」と言える目玉事業があるわけでも、人材育成の成果がすぐ出るわけでもない。
とはいえ、文化芸術がどれだけ喜びや感動を与えてくれるのか、一度でも経験した方なら分かるのではないだろうか。コロナ禍を経て、アートと人をつなぐSCARTSの存在意義はますます強くなるに違いない。
「あたらしい表現の可能性をひらく」「すべての人に開かれたアートとの出会いをつくる」「一人ひとりの創造性をささえる」――。SCARTSが掲げる3つのミッションは、私たち誰もに向けられている。アートに詳しいわけでもない筆者も、それがうれしいし、札幌市民としてちょっと誇らしい。
(文:新目七恵 写真:吉村卓也)

と、いきなりド・ストレートな設問で恐縮です。
芸術とはなんでしょう?
それは人の魂を揺さぶる静かな力、言葉では表しきれない感情のかたまり。時に慰めとなり、時に挑発する。
古代の洞窟壁画から現代のデジタルアートまで、表現したい欲求が人間にはあるのでしょうか?
美しさの追求か、真実の追究か、あるいは単なる自己表現か......。
う〜ん、哲学的!
なかなか難しいテーマだぞ。
でもきっと、本欄の読者のみなさまなら答えていただけそう。
お待ちしております!
好きなアーティストが青春時代のお気に入りの曲をアンコールでやってくれると泣いちゃいますね(H)
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