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特集Vol.254

北海道ロケの舞台裏 支えるフィルムコミッション

公開:2025年10月21日

スタジオやセットを飛び出し、街のあちこちで撮影した映像は、物語にリアリティや深み、インパクトをもたらし、見る者をグイと引き付ける。とはいえ、撮影専用の場所ではないので、さまざまな制約や許可申請が必要だ。そうした時、ロケがスムーズに進むようサポートするのが、非営利公的機関・フィルムコミッション(以下FC)。スマホ一つでたくさんの映像コンテンツが視聴できる今、引きも切らない北海道ロケの舞台裏について、道内のFC関係者に聞いてみた。

特集「北海道ロケの舞台裏 支えるフィルムコミッション」の表紙の写真です

北海道ロケの舞台裏

「羊と鋼の森」のロケ地、旭川・近文駅に佇む旭川地域フィルムコミッションの森崎真美恵さん。撮影時は築90年以上の木造待合所だったが、その後リニューアルされた
「羊と鋼の森」のロケ地、旭川・近文駅に佇む旭川地域フィルムコミッションの森崎真美恵さん。撮影時は築90年以上の木造待合所だったが、その後リニューアルされた

 スタジオやセットを飛び出し、街のあちこちで撮影した映像は、物語にリアリティや深み、インパクトをもたらし、見る者をグイと引き付ける。とはいえ、撮影専用の場所ではないので、さまざまな制約や許可申請が必要だ。そうした時、ロケがスムーズに進むようサポートするのが、非営利公的機関・フィルムコミッション(以下FC)。スマホ一つでたくさんの映像コンテンツが視聴できる今、引きも切らない北海道ロケの舞台裏について、道内のFC関係者に聞いてみた。

FC多い北海道 ロケ誘致も

 雪曇りの1月、札幌市資料館はロケ特有の緊張感に包まれていた。カメラ位置を確認し、荷物を運ぶスタッフたちの間で飛び交うのは韓国語。そう、撮影されていたのは韓国の配信系ドラマ。慌ただしい現場を見守っていたのは、札幌フィルムコミッションの職員だ。

 そもそもFCはアメリカ・コロラド州を発祥とし、日本では2000年代から各地で設立。ジャパン・フィルムコミッション(東京)によると、24年度の団体数は382。道内には17あり、都道府県別だと、首都圏近郊(茨城43、埼玉36、東京25、千葉23)・静岡(19)に次ぐ6番目、神奈川(17)と同位になる。

 「映像製作会社が東京に集中しており、関東近県のロケが増えるのは当然ですが、北海道にFCが多いのは、それだけ地域のコアな情報が求められているからと言えます」とジャパンFCの関根留理子事務局長。

 札幌FCによると、先の韓国ドラマのロケ地に札幌が選ばれたのは、「主人公が重要な転機を迎える場所が必要で、説得力をもって描ける空間として(市内のフランス料理店)オーベルジュ・ド・リル サッポロが選ばれた」のが理由の一つだそう。札幌FCは韓国の制作者とロケ施設をつないだり、市内の映像産業活性化のため地元の映像事業者を紹介したりして支援。作品は無事完成し、「隠し味にはロマンス」とのタイトルで、5月からNetflix(ネットフリックス)で配信されている。

 ちなみに、本場アメリカには及ばないものの、日本という小さな島国に400近いFCがあること自体、世界的に見て珍しいという。ライバル過多な中、ロケ可能施設やエキストラ希望者を集めるなど、環境を充実させるFCも多い。

 札幌市の外郭団体・さっぽろ産業振興財団が行っている札幌FCもその一つで、さらに、市内ロケに対する補助金事業を運営したり、撮影時の安全確保や法令遵守、関係機関との調整などに必要な知識・技能を持つ人を「札幌映像撮影コーディネーター」として認定する講習会を行ったりするなど、独自のロケ誘致策に励む。「隠し味にはロマンス」も1千万円の補助交付を受けた作品の一つ。また、同コーディネーターと密に連携したことでロケハンから撮影まで2カ月というタイトなスケジュールをトラブルなく終えることが出来たという。

札幌フィルムコミッションの職員
札幌市資料館の現場で、韓国のドラマ制作関係者らと話す札幌フィルムコミッションの職員(右側の2人)

見えない奮闘が、ワンシーンの輝きに

 「せっかくご縁があって自分の暮らす町を選んでくださったわけですから、何とか撮りやすく、良い作品になるように対応しています」と話すのは、旭川地域フィルムコミッションの森崎真美恵さん。森崎さんは、所属する一般社団法人旭川観光コンベンション協会がFC業務を行うことになった2013年から担当。もともと映画好きだそうだが、約20年間、旅行会社で働いた経験がかなり生かされたという。

 これまで関わった作品数は映画47本・テレビ番組112本以上。経験豊富なベテランFCの彼女でも、制作側のイメージに合う景色を見つける「ロケ地探し」は、いつも一筋縄ではいかないようだ。

 たとえば、「初めてほぼ一人で担当し、苦労した」という映画「羊と鋼の森」(2018年)。「山﨑賢人さん演じる主人公が降り立つ『田舎の無人駅』は、候補地の中でも私が昔利用していた近文駅をお薦めしたところ、すぐOKに。一方、主人公の実家となるロケ場所が決まらず、ロケ中も探し回り、ようやくふさわしい物件を見つけた時はスタッフと歓声を上げ、大喜びでした」と振り返る。

 Netflixの配信ドラマ「First Love 初恋」(22年)の場合、寒竹ゆり監督の要望で「ブルーの灯油タンク」をヒロイン・也英の実家に置くことになったものの、1990年代という時代設定に合う古い型番、しかも青いタンクはもう無く、スタッフが困っていたそう。「そこで、仕事の合間にリフォーム会社に飛び込み、事情を説明したところ、その場でガス燃料店に連絡し、偶然、数日後に廃棄する予定だった灯油タンクの情報を入手 ! 見に行くと数台あった中に青いタンクが。色味や劣化の感じから採用となり、ドラマにタンクが映った時は泣きそうになりました」。

青い灯油タンク
「First Love 初恋」撮影のため、旭川地域フィルムコミッションの森崎さんが探し出したレトロな青い灯油タンク(写真:旭川地域フィルムコミッション提供)

 ドラマを見ると、確かに背景にある! とはいえ、森崎さんには申し訳ないけれど、特別目を引くことはなかった。ただ、「First Love 初恋」は徹底した色へのこだわりが映像美を生み、その点に魅了された観客も少なくない。画面には映らない彼女の奮闘が、ワンシーンの輝きを支えていた。

あの市民映画にも、FCの支えあり

 「ロケ地交渉や人集めなど、はこだてフィルムコミッションの力がなければ映画は作れませんでした」と話すのは、菅原和博さん。函館出身の作家・佐藤泰志の小説を、多くの市民と共に函館で映画化した5本のシリーズ作品(2010年「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」、14年「そこのみにて光輝く」、16年「オーバー・フェンス」、18年「きみの鳥はうたえる」、21年「草の響き」)を世に送り出した中心的人物だ。
 函館で市民映画館「シネマアイリス」を経営する菅原さんが映画作りに挑戦した詳しい経緯は本誌200号(21年4月発行)の映画館特集で触れたので割愛するけれど、特に近作「草の響き」はコロナと重なり、「映画を作るべきか悩みましたが、沈んだ函館の街を見て、こういう時だから映画を作ることも大切ではと考え、撮影ガイドラインを守って実施。困難ではありましたが、それを乗り越えていい作品が出来たと思っています」と振り返り、「5作全てにはこだてFCのさまざまな支援が不可欠でした。FCは縁の下の力持ちなので目立ちませんが、本当にお世話になりました」と感謝する。
 今年は「海炭市叙景」映画化から15年の節目で、函館では9月に記念イベントが開催された。菅原さんは「当時は作るだけで精一杯で、15年後にまた映画について語れるなんて夢にも思いませんでした。でも最近、佐藤泰志ファンが若い世代や海外に増えており、市民の皆さんからも次回作への強い期待を感じます」と喜び、「佐藤小説で映画化したい作品はまだまだある。来年はシネマアイリス30周年の年でもあり、チャンスがあればぜひ挑戦したいです」と語る。

菅原和博さん
「海炭市叙景」のロケ地、函館・日和坂に立つ菅原和博さん。ここは主人公兄妹が路面電車とすれ違うと幼い頃の姿に変わっている…という幻想的なシーンの場所で、「こういう風につなぐのかと、後でうなりました」と振り返る。

ロケで深まる、地域の絆

 住民からの惜しみない応援が見事に結実した映画が、十勝・鹿追にもある。失意の写真家(中原丈雄)と山村留学生(山木雪羽那)が、鹿追の雄大な自然の中で交流する「おしゃべりな写真館」(24年)だ。

 きっかけは19年、鹿追出身の須永裕之プロデューサーが藤嘉行監督作品を故郷で上映したこと。打ち上げの席で「鹿追でも映画作りを」と盛り上がった結果、なんと須永さんと藤監督が町内に映画制作会社を設立。70人近い町民有志によるサポート団体「ささえ隊」をはじめ、十勝の住民や企業がさまざまな形で支援し、映画の完成・公開まで〝伴走〟した。

 藤監督は「セット建設や小道具の調達、炊き出しまで、ささえ隊が事実上FCの役割を果たしてくれて、とても助かりました」と振り返り、「ささえ隊」副隊長を務めた鳥せい鹿追店の女将・鈴木朝子さんも「撮影のため色々なものを用意した中で、夏におせち料理を作ったのはいい思い出。知らない世界に触れ、とても楽しかったです」と笑顔。藤監督は映画が縁で今年春から鹿追に移住し、喫茶店を経営しており、「大好きな十勝のため、これからは自分がFCの中核を担いたい」と語る。

 いざ撮影となればロケ地に経済効果が見込める上、聖地巡礼の観光客増や地域のイメージアップなど、地域ロケには、さまざまなメリットが期待できる。

 ただ、ジャパンFCの関根事務局長は〝良いフィルムコミッショナー〟の特徴をこう話す。「作品が好きなことは重要ですが、それ以上に自分の地域が好きという思いを持つ方が多いと感じます」。

 旭川地域FCの森崎さんも「FCに携わり、故郷・旭川を見る目は変わりました。生まれ育った町なのに知らないことが意外とたくさんある。もっと自分の町のことを知りたいと思います」と話していた。

 考えてみれば、先に挙げた映画「海炭市叙景」も「おしゃべりな写真館」も、函館・鹿追という土地でなければ成立しない内容で、「自分たちの町を知ってほしい」という熱い思いが詰まっていた。

 どんな形であれ、携わる人の「好き」という思いは、作品の細部に宿るものなのかもしれない。そんな無数の情熱がスクリーンや画面を彩っているかと思うと、大量の個人名や団体名が続くエンドロールの最後の最後まで、見逃せない気持ちになった。
(文:新目七恵 写真:吉村卓也)

藤嘉行監督
鹿追で喫茶店、その名も「おしゃべりな写真館」を仲間たちと営む藤嘉行監督(右)。 左は「ささえ隊」の鈴木朝子さん
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ『映画の舞台、北海道』

なぜか映画の舞台になることの多い北海道。本誌でも、「映画と握手」の連載で北海道がロケ地になった映画を紹介していますが、そのネタに困ることがないくらい、北海道はなぜか映画の素材となりやすいようです。
北海道が出てくる映画(テレビでも)で、印象に残っているものはありますか?
私はかつてちょっと海外に住んでいたとき(暑い国です)、そこの日本映画祭で「ぽっぽや」がかかり、冒頭の雪の中を機関車が走るシーンを見ただけで涙が出そうになりました。ああ、なんと美しいのだろう!雪の降るところに帰りたい!と思ったものです。
みなさんの北海道×映画の思い出、ぜひお聞かせください!

『Love Letter』(ぴのこだっくさん)

やっぱり函館が舞台になっている映画を観ると嬉しくなります。住んでて良かったなとも思います。(ひとみさん)

小学生の頃、父と映画館で観たのが「幸せの黄色いハンカチ」でした。陸別や新得、帯広などが舞台となっていて、その辺りに住んでいたこともあった父がとても嬉しそうに観ていたことを今も鮮明に覚えています。中学生の頃友人と観に行ったのは「駅ーSTATION」です。吹雪模様の銭函駅から始まる映画は、中学生にとって少し刺激的なシーンもありましたが、刑事の厳しさ、増毛や雄冬の海の色がとても印象に残っています。(さとり-さん)

北の国から(ドラマ)
北の大地、北海道の富良野の大自然を背景に、
黒板家と寄り添う人々と共に20年以上にわたる
家族愛と子供たちの成長・恋・愛・結婚…
不倫がリアルに描かれ家族の危機や再生への願いなど
人生の苦難や喜びは誰もが共感できるテーマで
共に歳を重ね体験する時間。
純と蛍の成長、五郎の深い言葉は心に響きましたね。
このドラマを機に富良野に足を運び自然美に魅せられました。(櫻子さん)

北海道が舞台になっている映画を見て観た次の日に弾丸で北海道旅行しました!(ゆきだるまさん)

北の桜守の舞台に行ったのがいい思い出(Kさん)

何の映画か忘れてしまいましたが、中山美穂さんが出てきた真っ白な雪に覆われた坂や街並みが印象に残っています。小樽だったかな?(あゆこさん)

岩井俊二監督の「Love Letter」。大好きで何度も見ている映画です。(ようこさん)

北海道だけが舞台ではありませんが映画「糸」を。中島みゆきさんが好きなので見に行きました。それ以外にもその頃コロナで映画館も閉鎖になったり新作がかからなかったりして「映画館で映画を見たい」という気持ちがふくらんでいたので、やっと見られると先行上映に行ったことを覚えています。美瑛の風景がとてもきれいでした。(ようこさん)

黄色いハンカチ 何なんでしょう 涙が止まらない(クローバーさん)

「どうすればよかったか」というドキュメント映画
北海道出身の映画監督の家族のお話
身近な場所に住む方の赤裸々な日常と悩む家族の記録で、私も一緒に思い悩んだ(ちなつさん)

やはり室蘭ロケが気になります。「mother」「さよならのつづき」など。 (いみさん)

室蘭や小樽、函館は坂と海があってやはり絵になりますよね(H)

コナンの前に室蘭が舞台になった回(ヤロメロさん)

幸福の黄色いハンカチです。たくさんのハンカチがとても印象的でした。高倉健さんや倍賞千恵子さんはもとより、若き日の武田鉄矢さんや桃井かおりさんもいい演技してましたよ。(ヒロリンさん)

なんといっても富良野!!
映画の舞台そのもの!(naさん)

ゴールデンカムイ面白かったので、続編も観る予定(あきえさん)

氷点
切なくて、苦しくて、怖くて、そんな気持ちが北海道の綺麗だけど刺さるような寒さ、厳しさ、冷たさに表れているような、でも春が来る、景色の綺麗な映画だなと思いました(かんちゃんさん)

高倉健さんの「幸せの黄色いハンカチ」でしょうか!
ハンカチが印象的でした。(チイチイ江森さん)

幸せの黄色いハンカチが印象的です♪最初にみた頃は北海道が舞台と知らず、唄に惹かれていましたが、今はやっぱり北海道の映画だなと思います(まさこさん)

私は高倉健さんのファンで北海道×映画と言えば、網走番外地、駅STATION、鉄道員、そして一番好きな幸せの黄色いハンカチを思い出します。寡黙な健さんの演技が光っていましたね。
何度見ても泣きました。(さくら餅さん)

去年、「名探偵コナン」の映画を娘と見に行きました。函館が舞台で、知っている名所がたくさん出てきて楽しかったです。(あきさん)

高倉健さん主演の「駅」
雪の駅が印象的でした。(キンキン江森さん)

まだ独身で若かりし頃、見た映画の幸せの黄色いハンカチは自分の青春時代と共に懐かしく思い出されます。最後に黄色い旗が棚引いている場面を身に夕張にも行きました。映画のセットぽっくはありましたが炭鉱が全盛期の昭和時代を感じました(あつこさん)

中山美穂と豊川悦司が主演の「Love Letter」は、公開から30年を経ってもロケ地小樽にはファンが訪れていますよ。(石さんさん)

すぐに思い出すのは、幸せの黄色いハンカチです。当時、流行った米国のポップスにヒントを得たんだと記憶してます。クールな高倉健、武田鉄矢と桃井かおりの不思議な若者。なんとも見事な組み合わせです。(miya56さん)

幸せの黄色いハンカチ  1枚だけでなく何枚もこいのぼりのようにあったように記憶しています(あんちょびパパさん)

やっぱり、高校まで富良野に住んでいたので
北の国からがイチオシですね。
都会には無い大地のおおらかさが、良いのかと思います(えびさん)

ゴールデンカムイ!映像もとてもきれいで北海道自慢出来ます!(けいこさん)

この年になると…映画やドラマの題名が出てきません。
阿部寛が主演で、北海道の牧場が舞台のテレビドラマ素敵でした。男の子がピアノが上手…。
もちろん、鉄道員も素敵でした。
(ゆみこさん)

どの季節も感動です(チマキチさん)

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※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください
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