妹背牛町の温泉施設「妹背牛温泉ペペル」は、サウナブームに乗って施設をリニューアルし、熱波師の地域おこし協力隊を募集。深川市出身の米林弘樹さんが第1号隊員となり、町の魅力を発信している。米林さんは救急救命士を目指していたが、交通事故で断念。叔母の勧めで応募し、熱波師として活動している。 置戸町の温泉施設「ゆぅゆ」で熱波師として活躍する青木ゆめのさん。協力隊として熱波師となり、町の魅力を発信する活動に取り組んでいる。現在は民泊施設のオーナーとして、町の新たな魅力を発信する。

「熱波師の地域おこし協力隊が置戸町にいるらしい」というウワサを聞いたのは、2年ほど前のこと。「熱波師」とは、サウナ室でストーブに水を掛けて蒸気を発生させ、タオルをあおいで熱い風(=熱波)を送る人の呼び名。熱いサウナ室内の温度をさらに高めるなんて信じられない!と思うかもしれないが、湿度も高まるので意外と苦しくなく、発汗が促されるとサウナブームの昨今、人気は急上昇。温浴施設の従業員がサービスで行うほか、副業にするサウナ好きも少なくない。とはいえ、サウナが地域振興につながるのだろうか?
調べると、まさに今、「熱波師の地域おこし協力隊を募集中」の町を発見! そこは、空知北部の妹背牛町。2つの町を訪ねたところ、熱波以上にアツい若者たちが待っていた。サウナが苦手な方にも届けたい 〝サウナで町おこし〟の物語をどうぞ。
まず向かったのは、札幌から高速で約1時間、道道94号線沿いにある「妹背牛温泉ペペル」。町の第3セクターが運営する日帰り施設で、利用料700円(町民は割引後500円)で100%源泉かけ流しの天然温泉が楽しめる。
1993年の開業時を知る方が今来たら、ちょっと驚くのではないか。何しろ、2つの大浴場は白黒を基調としたモダンな雰囲気。サウナは約3倍の広さとなり、自動で蒸気が出るオートロウリュという装置まで備えている。露天には樽型の屋外用サウナ「バレルサウナ」。2024年4月、館内はバリアフリーに生まれ変わっていた。
「開業から30年、老朽化した『ペペル』を町の観光拠点としてリニューアルすることになり、着目したのが近年のサウナブームです」と話すのは、町企画振興課の田村翔惟さん(29)。「そこで施設活性化のため、熱波師という形で地域おこし協力隊を募集しました」。
そもそも地域おこし協力隊とは、過疎地の定住人口増を目的に国が2009年から始めた制度。活動費は国の地方交付税で賄われるが、活動内容は「地域力の維持・強化」につながれば柔軟に設定できる。とはいえ、よく聞くのは農林水産業への従事や特産品開発などで、熱波師に特化するのは珍しい。
一方、一般的には聞き慣れない熱波師という肩書きだが、サウナ界隈では定着。その活動は「温浴施設で時間を決めて熱波する」「屋外サウナイベントで熱波する」の主に2パターンで、サウナ人気をけん引する存在と言ってもいい。
「ペペル」も道内各地から熱波師を招く中、協力隊として募ったのは、「町に根差した専属が欲しかったから」。2023年には近隣の東川町が町民浴場を本格サウナに改修して話題になったこと、妹背牛町民の中にサウナ好きが多かったことなども後押しになったという。

「ペペル」の熱波師として妹背牛町の魅力を発信してほしい。そんなユニークな要望に応える人材が見つかるものなのだろうか……。
「お待たせしました」と現れたのは、優しそうな青年。妹背牛町の〝熱波師〟隊員第1号・米林弘樹さん(28)だ。人材はいたのだ!
米林さんは深川市出身。隣接する妹背牛町は祖母の地元で、「ペペル」も家族で利用していたが、まさか自分が働くことになるとは思っていなかったと笑う。
きっかけは昨秋、「ペペル」を訪れた際、「熱波師の協力隊募集!」の張り紙を目にしたこと。「やってみたら?」という叔母の冗談交じりの一言が胸に残り、冬には応募を決意。審査に通ってこの春、隊員となった。
「実は救急救命士を目指して札幌に進学したのですが、交通事故に遭ってその道を絶たれ、金融系の会社で働いていました。家族に近い土地で転職したかったんです」と米林さんは振り返る。
温泉好きな父親の影響で6歳ごろからサウナに入り、20代初めには推し熱波師がいる札幌の老舗・ニコーリフレに通ったという米林さん。だが、熱波をしたことは無く、「熱波師のYouTube動画を見たり、ペペル所属の先輩の熱波師さんから教わったりして特訓しました」。
初めての熱波披露は6月。約20人が集まったが、「勢い余って持ち時間15分の後半、途中で暑さにやられて胃が痛くなり、先輩に助けてもらいました…」。ほろ苦いデビューとなったようだ。
「シルヴァニア・ヨネ」の熱波師名で活動して半年。「ペペル」の受付業務で客に顔を覚えてもらいながら、月数回、男湯サウナで熱波。サウナイベントやグッズ企画のほか、音楽イベントでタオルを使った演舞を披露するなど、サウナを通した町の盛り上がりを模索中。
技術を磨き、ゆくゆくは熱波師の大会に出場して「ペペル」の名を全国に広めるのが目標で、「憧れの熱波師・北見のモンスーン赤野さんの送る心地良い熱波のように、僕も気持ちの良い風を送りたいと意識しています。任期後の道は分かりませんが、ペペルの熱波師は続けたいです」と頼もしい。
妹背牛町では引き続き、熱波師の地域おこし協力隊となる女性1名も募集中。男女別に枠を設けるのは、裸の客が相手ゆえ。全国的に数少ない女性熱波師となった協力隊が、オホーツク・置戸町にいた。

置戸の熱波師「ユメノマタ夢乃」こと、青木ゆめのさん(26)にお会いしたのは10月中旬。3月に3年間の任期を終え、そのまま定住していた。
協力隊ではなくなった今も、町の「おけと勝山温泉ゆぅゆ」で熱波する彼女だが、「熱波師になるまで熱波を浴びたことが無かったんです(笑)」というから驚きだ。発端は、協力隊に採用された2022年4月にさかのぼる。
青木さんは北見市出身。服飾の専門学校卒業後、愛知県で働いていた頃、母親から置戸町の協力隊募集を聞いた。募集枠はアクティビティ隊員で、「キャンプやもの作りが好きだし、いずれは北海道に帰ろうと思っていました。置戸は父親の地元で縁も感じて…」と申し込み、合格。求められたのは、置戸の自然を生かした遊び方の考案、特に「ゆぅゆ」と絡めたアイデアだった。
「温泉のアクティビティが難しくて、それならサウナ室で出来る熱波師を私がやってみようかなと思ったんです」と経緯を説明する。
1994年に町営温泉として開業し、2017年のリニューアル後は一般社団法人が運営する「ゆぅゆ」。サウナストーブは当時珍しい水掛け可能なタイプを導入しており、熱波が出来る環境は整っていた。青木さん自身サウナにハマり出した時期で、「タオルであおげばいいのでは?」と気軽に構えていたそうだが、道のりはそう甘くはなかった。
そもそも熱波はヨーロッパのサウナ文化が発祥。日本では1990年代に大阪などで導入され、全国に広まると独自のカルチャーとして進化した。熱波と一口に言っても、タオルを頭上で回す「ヘリコプター」、振り下ろす「ランバージャック」、左右に振る「フラッグ」など手法はさまざま。さらに、サウナ室の構造やストーブの種類などによっても客の体感は変わるという。
思った以上に大変だと実感した青木さんだが、「『ゆぅゆ』に人の流れを作りたい」という思いもあり、旭川の熱波師に弟子入り。5回ほど通って実践的知識も身に付け、22年10月から熱波をスタートさせた。「最初はすごい緊張したんですけれど、楽しかった。熱波を知らずに興味本位で入ってくれる高齢の方も多く、湿度が高くなるので肌がヒリヒリしないと特に女性客に喜ばれました」と振り返る。
青木さんの存在を知った町民が趣味の羊毛を提供すると声を掛け、サウナハットやマットを手作りする体験教室に発展。また、「バレルサウナ」を個人で所有する町民から一時的に借り、冬の「ゆぅゆ」で1泊2日のサウナ・スノーシューツアーを開催するなど、熱波師アクティビティ隊員・青木さんの活動は町に刺激を与えていった。
青木さんはさらに、「置戸の中だけで盛り上がっても町の良さは広まらない」と熱波師団体・オホーツクサウナクラブの一員となり、町外のフェスにも参加。置戸産カラマツなどを使って自分で蒸留したアロマ水を用意するなど、熱波を〝木の町・置戸〟のアピールにも役立てる。
「ゆぅゆ」の野里智晃専務理事は「サウナは近年若年層に人気が高い。トレーラーハウスなどを隣接する『ゆぅゆ』では滞在型観光を重視しており、十勝や札幌のようなサウナイベントにも力を入れていきたいです」と期待する。

さて、協力隊を終えた青木さんが現在、置戸で何をしているかと言うと、一棟貸しの民泊施設オーナーになっていた。「バックパッカーとして海外を旅した経験もあり、人と向き合い、衣食住に関する暮らし方を提案できるようなゲストハウスを作るのが夢でした」。
「ゆぅゆ」から車で約10分、美しい丘に佇む古民家をリノベーションしたその建物は、この秋開業した。これから畑などを作り、屋外用サウナも置く計画だという。
「置戸町は人口約2千400人、オホーツクで知名度最下位の町。何もないんですけれど、必要なものはそろっていると私は思います」と話す青木さんの表情はほがらかだった。
熱波師隊員は町の新たなつながりや人の流れを生み出し、サウナ室はただ汗をかく場所ではなく、町の魅力を文字通り体感できる場所になっていた。そんな若者の挑戦を受け入れた町に流れる風は、とびきり熱くて、さわやかな気がした。
(文:新目七恵 写真:吉村卓也)
「整う(ととのう)」という言葉をよく聞くようになりましたね。
もともとサウナ愛好家から広まった言葉のようです。サウナに入って汗を流して、水風呂でさっぱり。身も心もリフレッシュ、「整った〜!」というらしいです。
実は私は暑いのが苦手で、整うには温泉だけで十分です。サウナ好きの方からは、サウナの推しポイントをぜひ聞かせていただければと思います。
私のようにサウナ暑過すぎ!という方からは、それぞれのお勧めの「整い方」、ぜひお知らせください。
わかります!犬ってなぜあのように人を癒せる力をもっているのでしょうか・・・(H)
ヨガの整い未経験です・・・でも汗をかいてすっきりしそうですね(H)
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