ボードゲーム(以下、ボドゲ)と聞くと、人生ゲームやオセロ、モノポリーなど子ども向けの盤上ゲームを連想するかもしれない。ところがどっこい、大人も夢中になる言葉遊びや謎解き、戦略ゲームなど、ボドゲの世界は今や百花繚乱。地方・個人発の作品も増えていて、北海道からも累計35万部の大ヒットシリーズや、海外から注目を集める新作ゲームが誕生している。作品誕生の舞台裏をのぞいてみた。

ボードゲーム(以下、ボドゲ)と聞くと、人生ゲームやオセロ、モノポリーなど子ども向けの盤上ゲームを連想するかもしれない。ところがどっこい、大人も夢中になる言葉遊びや謎解き、戦略ゲームなど、ボドゲの世界は今や百花繚乱。地方・個人発の作品も増えていて、北海道からも累計35万部の大ヒットシリーズや、海外から注目を集める新作ゲームが誕生している。作品誕生の舞台裏をのぞいてみた。
札幌・藻岩山麓の住宅街に佇むレンガ造りの洋館。ここは、全国に愛好者を持つ、あるボードゲームを生んだゲームメーカー・ClaGla(クラグラ)の事務所である。ゲームの名は、「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」。
「今プロ」と略されるこのゲームのルールは簡単。配られたカードを組み合わせ、即興で作ったプロポーズの言葉を親プレーヤーに発表するというもの。入れ替わる親プレーヤーに多く選ばれた人が勝ちとなるが、勝敗はともあれ、ユニークな〝愛の告白〟に誰もが笑って幸せな気分になれるのがポイント。2018年の販売直後から人気が爆発し、基本セットに追加できる「拡張版」が19種類、韓国語版・中国語版、さらに小説までできている。
「テストプレイで涙を流すほど爆笑し、『これは面白い!量産させてくれない?』と考案者のdaipo(ダイポ)君に相談したのが始まりです」。そう振り返るのは、ClaGla代表取締役のこだま じゅんじろうさん。何でも、このゲームのために起業したそうだが…詳しい話を聞く前に、まずはボードゲームの定義を確認したい。
一般社団法人ボードゲーム(東京)によると、実はボードゲームに明確な定義はない。だが、同法人では「1979年以降に作られた大人も子どもも楽しめるゲーム」という基準を設けているという。
なぜ1979年かといえば、本場ドイツで「年間ゲーム大賞」が始まった年だから。これは、専門家がその年最も優れたボードゲームを選ぶもので、世界最高峰の賞とされる。ちなみに、2025年には初めて日本人のクリエイターが受賞して話題となった。
ボドゲの基準に話を戻すと、一般的には紙やサイコロを使うアナログゲームを指すが、最近はスマホでキーワードを読み込むなどアプリ連動型もあり、実に多種多様だとか。
同法人の岩田慎太郎会長は「日本では2002年に発売されたドイツ発祥の『カタン』が人気に火を付けました。その後、コロナで需要が高まり、YouTuberが取り上げたことも追い風になりました」と解説し、「今プロ」を「愛好者のすそ野を広げ、ボドゲ界に革命を起こした作品」と位置付ける。

そんなヒット作を見い出したこだまさん自身、大のゲーム好き。だが、ClaGla創業の数年前まで「ボドゲを個人で制作できるとは知りませんでした」と明かす。
そもそもは2015年、daipoさんが会社の同僚のセンバ ノブユキさんと趣味でボドゲを作り始めたのがきっかけ。それを知ったこだまさんがサークルの仲間に加わり、daipoさんの手作りゲームを商業化したいと2018年に札幌で立ち上げたのが、株式会社クラグラというわけだ。
「今プロ」が支持された理由を、こだまさんは「daipo君自身が優しい人物で、誰も傷つかないゲームを考えたことが大きいのでは」と分析する。実は筆者も「今プロ」の愛好者。子どもが時にふざけて、時に照れながらプロポーズする姿に、何度笑い転げ、癒やされただろう!そんな我が家でもう一つ、盛り上がったClaGlaのゲームが、「ナゾグラのおうちなぞ」だ。手掛けたClaGla専務で謎解きクリエイターのセンバさんに話を聞いた。
〝謎だらけの無人島に漂着したアナタ。限られた物とサバイバル技術を使って、生き残る方法を探し出せ‼〟。センバさん作「アウトドア系謎解き タメニナル無人島サバイバル」は、1枚の封筒と5枚のシートに記された謎を解き進み、最後の答えを見つけ出す内容。
謎解きというと大掛かりなものをイメージしがちだが、これはおうちでじっくり考えられるのが特長。「退屈研究所からの手紙」など、シリーズは13作品あり、うち11作品がセンバさんの作品だ。
「前作を超えなきゃというプレッシャーもあり、毎回〝難産〟です」とセンバさん。まずコンセプトを決め、数カ月かけて詰めていくそうだが、「アイデアが出ない時は苦しい。でも、考え続けて『これならできる!』と思いつくとテンションが上がります」と説明する。
心掛けるのは「ポジティブな影響を与えたい」ということ。「遊んだ後に、人生がちょっと良くなればいいなと思っています」と語る。
「自分たちがワクワクすることを大切に」というモットーを掲げたClaGlaの作品は50以上。こだまさんは「送料やビジネス面で北海道は不利ですが、『北海道で面白いことができる』ことを証明するためにも、勇気をもって挑んでいます」と思いを語る。一方、ひょんなことからボドゲ作りに挑戦し、海外から熱視線を集める若者たちが、ニセコにいた。

ニセコの道の駅から車で約15分。まだ雪の残る羊蹄山が一望できる場所に、「クマゲラ製作」はあった。
出迎えてくれた代表の加藤仁さんに、さっそく目当てのゲームを見せてもらおうと思ったら、先に敷地を案内するという。そこで目にした光景にびっくり。
ニワトリ小屋にソーラーパネル。そして、3Dプリンターやレーザー加工機などデジタルの工作機械類。これらとボドゲが、どう結びつくのだろうか?
プログラマーのアイズさんに挨拶し、公私ともにパートナーであるまりあさんが合流してから伺った話の面白いこと!
どこから話すべきか迷うけれど、やっぱりゲームの紹介から入ることにしよう。
クマゲラ製作の「YOTEI(ヨーテイ)」は、その名の通り羊蹄山麓を舞台にした戦略型のボードゲームだ。
プレーヤーは「開発者」となり、「森」「山」「農地」、さらに動植物やグルメ、スキー場などの〝魅力〟が描かれたカードを取り合い、ゲーム終了時までにより多くの「魅力ポイント」獲得を目指す。
カードの取得には色々な条件があり、重要になるのが通貨代わりの「ジャガイモ」だ。木製の小さなコマは少し不揃い。すると、加藤さんが「一つ一つ手作りなんです。どうやって道産木材に付加価値を付けるか?が、始まりでした」と説明し始めた。
そもそもクマゲラ製作は、道外出身の加藤さんが「環境に配慮した暮らしをしたい」という思いから、移住先の北海道・ニセコで興した木材加工の合同会社。ニワトリの飼育や太陽光発電に取り組むのはそのためで、木の端材の活用を考えた時、思いついたのが、ボドゲ。つまり、木製パーツを使ったアナログゲームの開発だったという。
「どんなメッセージを込めたいか考えた時、ニセコの開発地が金融商品になるのは悲しいと思ったんです。そこで『最も魅力的な町を作る』というテーマを設定しました」とまりあさん。「自然や景色、生産者さんなど、ニセコに実在するものを私がイラストで描きました。魅力を示すハートの数も、私たちの基準なんです」とお茶目に笑う。
とはいえ、初のボドゲ作りは一筋縄ではいかなかったそう。得意な仲間が骨組みを作り、地域住民に協力してもらって何度も何度も遊んでは改良を繰り返し、2年掛かりで納得のいく形にブラッシュアップ。北海道版が完成したのは、昨春のことだった。

当初は地元土産としてだけ売るつもりだったのが、すでに海外版の発売が決まっているという経緯を聞くと、「デンマークから遊びに来た友人に試作品を見せたら『すごいポテンシャル!』と海外展開を勧められたんです。実は彼女はボドゲショップで働く人でした(笑)」と加藤さん。
そこでドイツのゲーム即売会に申し込み、昨秋会場入りして驚いたのが、規模の大きさと熱量の高さ。なんと、出展した「シュピール・エッセン」は、業界関係者や現地の愛好者が一堂に集まる世界最大級のイベントだったという。
紙幅が足りないので割愛するけれど、加藤さんたちの猛アピールも功を奏し、無名だった「YOTEI」は大反響。マルタ共和国のボドゲ専門出版社と契約し、4月に実施した海外向けクラウドファンディングは、わずか1時間で目標金額を達成。2千人以上の支援者に、クラファン版「YOTEI」が届く見込みだ。
加藤さんは「成功の理由は、ニセコに根差したテーマ性や素材にありました。僕たちがゲームの舞台となった町から来たことに、皆さん驚き、深く共感してくれたんです」と振り返る。まりあさんも「最初は海外輸出に不安もありましたが、ドイツで出会った方に『本物のYOTEIを見に行くのが夢です』と言われて感動しました。ニセコの温かさや可愛さを、ゲームを通して多くの人に伝えられればうれしいです」と力を込める。
「対面コミュニケーションの楽しさ」(ClaGlaセンバさん)や「100年先でも遊べる普遍性」(同こだまさん)といった魅力に加えて、ボードゲームは、地域と人をつなぎ、町の良さを見直す可能性をも秘めていた。
最後に、それぞれの仕事場にお邪魔して実感したことを付け加えたい。北海道から全国、世界へ。人の心を動かすゲームの作り手は、作品同様楽しく、ハートフルな人たちだった。
(文:新目七恵 写真:吉村卓也、山本由紀夫)
「ゲーム」といえば何を想像するでしょうか?
今の若い人達だと、まちがいなくビデオゲーム、デジタルの世界なのでしょうね。
私が子どものころはいろいろな「盤」が流行りましたね。もちろんすべてアナログ。
人生ゲーム、バンカース、そして野球盤!対戦相手と向き合いながら、和気藹々とやるゲームはコミュニケーションの場でもありましたね。広い意味では、トランプも、双六も、将棋や囲碁もゲームですよね。
そんなゲーム、すっかりやらなくなったなぁ。みなさんはいかがですか?
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