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地域を知る一冊 vol.4

静かな大地

池澤 夏樹(朝日文庫)
登場する地域:静内、帯広

公開:2019年1月1日
地域を知る一冊
公開:2019年1月1日

 北海道と命名されて150年だという。50年前は、「開基100年」「開拓100年」と言っていなかったか。「開基」や「開拓」の文字はなぜ消えてしまったのだろう。北海道民が、それらの言葉に含まれる欺瞞性に気付いたということだろうか。そうであれば、道民自身が成熟したとも言える。しかし、ある言葉が消えることで何かが見えなくなることがある。もしかすると、私達は「北海道命名」と標榜されることで何か目隠しをされてしまったのかもしれない。「開基」や「開拓」にあったほろ苦さを感じる契機を奪われたのかもしれない。

 『静かな大地』は、その隠された問題を明らかにしてくれる。舞台の大半は静内だが、語り手由良の語る場は帯広である。この物語は作者の池澤さんが幼少期、母方の祖母から帯広で聞いた一族の英雄譚が元になっている。だから語り継ぐ場は帯広となった。内容について触れる紙幅はもうない。北海道に住み、生きるとはどういうことなのか。開拓移民の末裔である池澤さんが向き合った事実に、私達も本書を手に、目を向けねばならない。北海道命名150年、『静かな大地』は必読の書である。

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