河﨑秋子は人と動物との共生のあり方を問い続けてきた作家である。本書では札幌に住む大学生岸谷万智(マチ)の眼を通して真摯にその問題を問いかけている。
他民族の文学作品を深く理解することは容易ではない。言葉の背後には歴史や文化、世界観が存在するため、それらを知らなければ表面的な理解にとどまり、「分かったつもり」になってしまう危険がある。
本書は宮下奈都が家族5人で福井から北海道の新得町トムラウシへ移住した1年の記録である。日本百名山の一つトムラウシ山の麓に位置するこの地はアイヌ語で「カムイミンタラ」(神々の遊ぶ庭)と呼ばれる大雪山国立公園の懐に抱かれた別天地だ。
「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた」本書はこの一文から幕を開ける。盗んだことを指摘されても「お前が濡れるといけないと思って」と悪びれることもなく私に傘を差し出す…
題名の「相馬眼(そうまがん)」とは、馬の能力を見抜く技術や見識のこと。日高地方の軽種馬産業と日本競馬界の発展に大きな足跡を残した岡田繁幸の生涯を描いたドキュメンタリーだ。
地名。それは何ということもない土地の名前だ。なぜアイヌ語由来地名がこんなにも魅力的なのか。その理由は、旧記にある地名を手がかりにして、現代の地図にない地形を「発見」する宝探しができるからかもしれない。
『赤い人』は樺戸集治監の開設から廃監までの38年間を綴った作品である。タイトルの「赤」とは囚人たちの獄衣の色をさす。これであれば囚人たちが脱走しても目立ちやすい。
写真家岡田敦が「幻の島」ユルリ島を訪れ、島とそこに生息する馬、そして島を離れてなお心を寄せる人々の声を記録した紀行。静謐と荒寥が交錯する風景の中で、人と自然、記憶と忘却の境界を問いかける。