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>HOME >特集一覧 >VOL.264「道産子〜ああ、君は北海道の馬」(2026年8月17日)
特集Vol.264

道産子〜ああ、君は北海道の馬

公開:2026年8月17日

道民の暮らしに昔から寄り添ってきた北海道和種馬「どさんこ」のいる風景が今、失われつつある。北海道を中心に、推定頭数は1,000頭余りとなり、この30年で半数以下に激減した。「北海道育ちの道産子」「道産子パワー」などは、北海道の人たちを表す言葉としても使われてきた。なじみ深い生き物を守ろうと、奮闘している人たちがいる。

特集「道産子〜ああ、君は北海道の馬」の表紙の写真です

北海道和種馬「どさんこ」を未来へ。

「剣山どさんこ牧」のどさんこたち
山あり谷ありの自然環境でのびのびと放牧されている、「剣山どさんこ牧」のどさんこたち

道民の暮らしに昔から寄り添ってきた北海道和種馬「どさんこ」のいる風景が今、失われつつある。北海道を中心に、推定頭数は1,000頭余りとなり、この30年で半数以下に激減した。「北海道育ちの道産子」「道産子パワー」などは、北海道の人たちを表す言葉としても使われてきた。なじみ深い生き物を守ろうと、奮闘している人たちがいる。 

100ヘクタールの地に悠々と暮らす

 道東・十勝平野の西部に位置する芽室町。帯広市近隣のベッドタウンとして、また、農業の一大生産地として発展している。その市街地から車で25分ほど離れた、日高山脈ふもとにあるのが「剣山どさんこ牧(まき)」だ。

 山々に囲まれた約100ヘクタールもの土地に、80頭のどさんこたちがのびのびと点在する。あえて「牧場」としないのは、牛や馬を放し飼いにする広大な場所を日本では古くから牧(まき)と呼ぶことからだ。その名の通り、柵に囲われていない山の斜面や青々とした草地にどさんこたちが自由に移動している。

 北海道を代表するどさんこの産地として34年の歴史を持つこの牧場は今年1月、新しいオーナーを迎えた。それが齊藤朋子さんだ。「馬と聞くと、多くの人がイメージするのがサラブレッドなどの競走馬。どさんこの体高は130センチほど。子どもや乗馬初心者が乗るのにもちょうど良いサイズ感で、何よりもかわいい」と、自分たちの馬を愛おしそうに見つめる。

大学での学びと、馬の師匠との出会い

 神奈川県出身。幼少期にふれあい動物園で馬に触れたことをきっかけに、馬のとりことなり、馬のすべてを学べる帯広畜産大学に進学した。

 そして20年前、障がい者を対象にした乗馬体験が学内で開かれ出会ったのが、牧場前オーナーであり「馬の師匠」になる川原弘之さんだった。齊藤さんを一目で馬好きと見抜き、「どさんこ好きかい?」と話しかけてきた。

 もともと帯広の農家出身で農業改良普及員だった川原さんは、55歳で早期退職してこの芽室町上美生の山地を少しずつ買い取り、1992年に「剣山どさんこ牧」を開業した。はじめは純粋な馬産だったが、徐々に乗馬用の馬の生産に切り替え、どさんこの付加価値を高めていった。

 ただ馬を飼育するのではなく、どさんこの魅力を伝えようと、乗馬しながら的を射る日本伝統の流鏑馬(やぶさめ)も始めた。川原さんのもとに通うようになっていた齊藤さんも愛馬を購入し、参加するようになっていた。齊藤さんは大学で博士号を取得後、畜産関係の一般企業に就職。2015年から22年まで、母校の大学教員として馬に関する研究職に就いた。大学退職後、一般企業で働いていた時期も、川原さんやどさんこたちとの関係は続いていた。

齊藤さん
剣山どさんこ牧の事務所で語る齊藤さん。壁には前オーナー川原さんから引き継いだ「馬飼い」の哲学が掲示されていた

転機は師匠からの一通のメール

 転機が訪れたのは、2024年4月。川原さんから一通のショートメールが届いた。「牧場を継がないか」。

 高齢となり牧場運営が難しくなった川原さんが後継者に選んだのは、齊藤さんだった。この10年、牧場を引き継ぎたいという人が現れなかったわけではない。全国からどさんこの魅力にひかれ、後を継ぎたいという人は何人もいたが、形にはならなかった。

 これからというときに、川原さんは病に倒れてしまった。齊藤さんは、「もう、猶予はない。私が牧場を継ぐということは、約80頭のどさんこたちを買い取ること。買い取れなかったら、馬たちは処分されて馬肉になってしまう」と覚悟を決めた。牧場の土地を川原さんから借りて、農家として新規に出発すること、馬たちを購入するための資金を確保すること。行政や金融機関の手続きはどれも難航したが、川原さんの家族の尽力もあり2026年1月、すべての契約が円満に完了し、晴れて正式な後継ぎとなった。

守りたい、北海道開拓の遺産

 なぜすべてを投げ打ち、どさんこたちを守ろうとするのか。それは、「北海道開拓の遺産を絶やしてはならない」という使命感からだ。江戸時代、本州から昆布漁のパートナーとして人間と共に渡ってきた在来馬がどさんこのルーツといわれる。その後、人間たちに取り残され、厳寒の原野でコンブやササを食べて生き残り、北海道和種となった。

 その後も北海道開拓の貴重な働き手として、欠かせない存在になった。どさんこは、小柄ながらもがっしりとした体格と、不整地でも安定して歩ける持久力が特徴だ。齊藤さんは「自分たちの力で生きてきたルーツがあるので、芯が強い。優しさだけではなく、頭もよく、納得するまで動かない」。そんな頑固な性格も好きだという。

D-base代表の中村三保子さん
D-base代表の中村三保子さん。かつて、川原さんのもとでどさんこの調教を手掛けた。新体制になってほぼ毎日のように「剣山どさんこ牧」に通い、調教を伝授してスタッフたちを支えている

適切に管理されなかったどさんこ

 日本の在来馬は木曽馬、宮古馬、トカラ馬など8種いるが、どさんこは他の和種馬に比べて比較的頭数が多かったこともあり、適切に管理されてこなかった。現在は約1,000頭まで減り、血統の多様性が失われる近交退化(血が濃くなることによる弊害)のリスクが指摘されている。背景には、近代化で農業や運搬で使われる機会が減ったことや、生産者の高齢化などが挙げられる。

 齊藤さんは、「在来馬の減少には明治政府の施策も大きく影響している」という。戦地での経験から、在来馬より体高があり従順な洋種馬の生産が奨励され、在来馬の種付けが禁止された時代もあった。

一度絶滅したら二度と復活はできない

 「市場原理で需要がなくなれば、減少しても仕方がないと言われることもある。しかし、日本にも固有の馬がいて、北海道で共に暮らしてきたパートナーという存在を失いたくない。一回絶滅してしまったら、もう二度と復活させることはできない」(齊藤さん)

 齊藤さんは、どさんこの危機的な状況を伝えようとクラウドファンディング(ネットによる資金調達)にも挑戦した。多くの賛同者を得て、目指すのは安定的な生産だ。さらに、ホーストレッキング、牧場ピクニックなどの再開に加え、馬の生態や扱い方を学ぶ「馬学講座」といった新たな取り組みも始まっている。

 「剣山どさんこ牧」の馬たちは、全国から引き合いが絶えない。それも、川原さんの時代から引き継がれてきた、広大な敷地でのびのびと育った環境に独自の調教という要素が加わり、「どさんこ牧の馬が欲しい」というブランドにつながっている。

どさんこ牧を支える「調教」の要

 ブランドの重要な核である「調教」を担ってきたのが、芽室町に隣接する清水町で同じくどさんこ牧場「D-base(ディーベース)」を運営する中村三保子さんだ。中村さんも齊藤さんと同様、川原さんの人柄に惹かれ「剣山どさんこ牧」で、2年間住み込みで働いた。

 中村さんが調教を開始した10数年前、どさんこ牧にいた約100頭の半数は人との距離を保ち、人の世話にもならないと決めた野生の馬だった。

 川原さんは人間とも接することができる残り半数の子孫を残すことにこだわって生産してきた。

 その思いを引き継ぎ、中村さんが取り入れたのが、人間の力や恐怖で馬を支配する伝統的な調教法とは対極にある、「ホースマンシップ」という考え方だった。馬を理解し、馬と良好な信頼関係を築くために、人間側の知識や技術、心のあり方を重視する。群れで暮らし、怖がりな草食動物の習性を生かして、馬にも分かりやすい方法で「この人のそばにいると安心」と思わせる調教方法だ。

本を自費出版
中村さんは、どさんこたちと暮らしてきた日々を振り返り、心温まる出来事や不思議なエピソードをまとめた本を自費出版した。(Amazonで購入可能)

野生に近い環境で、人とも接する

 山林のどさんこ牧は、平坦な土地はごくわずかで、敷地内には起伏や崖、小川もある。「ここで暮らすどさんこたちは、野生で感じるすべてを体験しながら、人といるのも好きだし、人間を仲間であり保護者だとも思っている」と中村さん。

 中村さんは2015年から、芽室町にある8ヘクタールの敷地でどさんこを主体に約20頭を飼養し、道内外の会員たちにホーストレッキングを提供している。

 自分が手掛けてきた調教は後輩の高尾訓也さんが引き継ぐ。高尾さんは、馬の背中に荷物を載せて運送する道南の伝統技術「だんづけ」の数少ない継承者でもある。

 1本のロープを匠の技で馬の背に荷物とともに括り付ける「だんづけ」。どさんこたちは、道路が整備されて馬車が普及する以前は、物資運搬の重要な役目を担っていた。1980年代後半の青函トンネル建設時には山あいの険しい道のりをどさんこたちが電線を担いで働いていたという。

馬から教わった人生、恩返ししたい

 100頭にも及ぶ馬と共に暮らし、今も馬がそばにいる生活を送る中村さんは「馬も人と同じで一頭一頭が違う。人も馬も物のとらえ方、理解もさまざま。それに合わせた調教を考えるのが人の役目。私は彼らからたくさんのことを教わった。その恩返しとして、このどさんこたちと『どさんこ牧』を守るために協力は惜しまない」と語る。自分より一世代下の齊藤さんや高尾さんを見守る目はどこまでも優しい。

 どさんこと、どさんこのいる風景に魅了された人たちの営みは、世代を超えて今も続いている。
(文:酒井花 写真:吉村卓也)

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください

ここからは特集に関連して会員の皆さんからよせられたコメントをご紹介します。

投稿テーマ『道産子』

「どさんこ」と聞いて思い浮かぶものは何ですか? 馬でしょうか?
人でしょうか? それとも「コンサドーレ」? 北海道に暮らして30年。北海道生まれではないのですが、気分はすっかり「道産子」なんですが、やっぱり違うのかなぁ。
北海道生まれの人も、そうでない人も、「道産子」についての思い、お聞かせください!

ジャガイモのイメージです(Kさん)

馬も コンサドーレも思い浮かびますが、北海道出身の我々こそが 道産子ですね。(あきこさん)

北海道生まれの人(ゆきだるまさん)

馬を一番最初に思い浮かべました!
緑一面を立て髪をなびかせて走る馬は見ていて気持ちがいいです
(そらさん)

1958年10月1日に公開された映画『道産子』です。北海道を背景に、少年と馬の心あたたまる交流を描いた作品が大好きです!(しんやさん)

地元のローカルTV番組のSTVです。(ひとみさん)

「どさん子」と聴くと『馬』を思い浮かべます。背が小さくて足が太くて!がっしりした力持ち!憧れ馬です。控えめでそれでいて頼もしい存在!そんな感じを重ねています。(fukutanさん)

やきそば弁当食べれるの羨ましい(そういちろうさん)

北海道生まれの方のイメージです。(りえさん)

北海道は旅行で行くくらいですが、寒い冬を暮らしている人たちこそ、道産子だと思います。(キャンさん)

やっぱり第一にどさんこといえば北海道に生まれ育った者であるというイメージです。
あとはやっぱり小学生時からスタートしている札幌テレビ放送で放送されているワイド番組の「どさんこワイド」です。どさんこワイドで育ちましたし50年は続きますよう願っております。
道民みんなそれぞれが思い入れのあるどさんこが多くあって今仕事で関西在住ですがどさんこについて考える機会を作って頂いて感謝です。(KANTON$さん)

約50年道産子です。札幌ドームができたことが一番の思い出です。コンサと日ハムが来て、コンサートもたくさん開かれ、北海道が盛り上がったと思います。(ゆうさん)

ドームが出来た時の熱狂、ワールドカップの会場にもなりましたね(H)

北海道生まれより短くて使いやすいので便利そのもの(チュ-ポンさん)

産まれも育ちも道産子です!
寒さに強かったり、方言がでると、「だって道産子だもん!」と言ってしまいます
(つとさん)

なんといっても、ばんえい競馬です。感動感激しました。涙溢れました。岩見沢には2年続けて見に行きました。力、出し尽くすって、このことなんだなって…。(ひろしさん)

道産子なのですが美味しい空気や景色など食べ物も美味しくて星も綺麗で本当に北海道に生まれてつくづく良かったなぁと思って生きてます(サティさん)

馬の道産子を思い浮かべます。
小柄でガッチリとした体型で厳しい冬にも雪の中で歩くにも適した体で昔は荒地を耕していたと聞いてます。
北海道の開拓にはなくてはならない存在だったのでしょうね。(あささおさん)

広い大地と寒い冬をイメージし、たくましさを感じます。(shshさん)

一番に馬、そしてちいさいころから寒さにも耐えて身体も心も道産子(笑)(ヒロミさん)

生粋の北海道生まれの方(ひとみさん)

馬です。(あたりはずれさん)

どさんこワイドです!いつかお絵描きコーナーに出演したい!(みなみさん)

北海道出身で郷土愛がより強い人のことだと思っています。(ひめいちさん)

生まれも育ちも北海道。74年暮らしているが、「道産子」とは何を意味するのかいまだに判然としない。(あつろうさん)

道民のことを道産子って言うよと、学生時代に道外出身者に話していました。(としみつさん)

北海道出身の人をいうイメージで、他ではなじみがなくあまり聞かないです。(Ksさん)

コンサドーレ札幌です。
北海道にできたプロチームとても誇りです(やっちさん)

寒さに強く、心が優しいイメージ
何事にも前向きに行動できる人(かずよしさん)

道産子 自分か帯広方面にいるでっかい馬の2択です
(たかしさん)

北海道生まれの人(ひろみさん)

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