このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME  >よみもの一覧  >「常設」に会いに行く  >「中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家」(2021/8/16)
「常設」に会いに行く vol.5

中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家

公開:2021年8月16日
「常設」に会いに行く

ブロンズと友情の作家

中原悌二郎 《若きカフカス人》1919年
中原悌二郎 《若きカフカス人》1919年
舟越桂 《点の中の距離》2003年
舟越桂 《点の中の距離》2003年


 中原悌二郎(1888〜1921)といえば、東京新宿中村屋を連想せざるを得ないだろう。彼の代表作とされる「若きカフカス人」のモデルであるアジアを放浪していたロシア人"ニンツァ"に会ったのはこの中村屋であり、悌二郎の人生にとって重要な友や師との出会いも中村屋を経由しなければ、ありえなかったからである。
 明治21年に生まれて、大正10年に早逝した悌二郎が到達したブロンズ彫刻の技術は当時の日本人青年としては驚異的に確かな水準に達した。若い詩人や芸術家が集った新宿中村屋での日々。世界中とつながっているような気分にさせてくれる自由でモダンな空気の中で彼は新しい造形とは何かを追求したのだろう。この記念彫刻美術館にあるのと同じ「若きカフカス人」が中村屋サロン美術館にもある。一つの型から複数の作品を鋳造できるブロンズの良いところである。
 ただし、たとえ中原悌二郎がすぐれた彫刻家であっても、個人記念館に恵まれるためにはそれなりの仕掛けが必要であった。2人の彫刻家、加藤顕清(かとうけんせい)と平櫛田中(ひらくしでんちゅう)に助けられた作品の収集があって初めて記念館構想が動いた。そして、元陸軍将校達の親睦サロン的な建物だった旭川の「偕行社」という重要文化財の改装を得て、彼の全遺作ブロンズ12作の居場所が定まった。豊かな若い日の友情と没後の敬愛を得て、実は幸運な作家であったと言えるだろう。
 旭川の街には買い物公園があり、そこにはさまざまな彫刻が置かれている。ここは彫刻を愛する街なのだ。だから、公園などの野外に置かれた作品を毎年掃除するボランティア活動も盛んである。ボランティアの方々は旭川市内の彫刻の所在を調査し、地図も作ってしまった。
 この美術館でも50年前から中原悌二郎賞を設けて、若手の発掘に尽力してきた。木内克(きのうちよし)、舟越保武から三沢厚彦までの錚々たる作家がこれを受賞している。この美術館の2階には歴代の受賞作が入れ替えながら展示されている。旭川駅の東口にある分館・彫刻美術館ステーションギャラリーにもその一部がある。受賞作以外の砂澤ビッキなどの作品を含めて、熱心に収蔵されてきた優品揃いだ。


旭川市春光5条7丁目 tel:0166-46-6277
9:00〜17:00(入館は16:30まで)。休館:毎週月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始(12月30日から1月4日)6月から9月の間は無休。一般450円、高校生300円、中学生以下無料。詳細はお問い合わせ下さい。

※このページの内容、執筆者の肩書きなどは執筆当時のものです
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください

「常設」に会いに行く バックナンバー

よみもの「荒井工芸館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.23

荒井工芸館

2023年2月20日
よみもの「有島記念館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.22

有島記念館

2023年1月16日
よみもの「北海道立釧路芸術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.21

北海道立釧路芸術館

2022年12月19日
よみもの「モエレ沼公園」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.20

モエレ沼公園

2022年11月21日
よみもの「北一ヴェネツィア美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.19

北一ヴェネツィア美術館

2022年10月17日
よみもの「木田金次郎美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.18

木田金次郎美術館

2022年9月20日
よみもの「ニトリの小樽芸術村に4月に加わったアールヌーヴォーの館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.17

ニトリの小樽芸術村に4月に加わったアールヌーヴォーの館

2022年8月15日
よみもの「苫小牧市美術博物館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.16

苫小牧市美術博物館

2022年7月19日
よみもの「相原求一朗美術館(中札内)」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.15

相原求一朗美術館(中札内)

2022年6月20日
よみもの「第一洋食店(苫小牧)」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.14

第一洋食店(苫小牧)

2022年5月16日
よみもの「国立アイヌ民族博物館(ウポポイ内)」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.13

国立アイヌ民族博物館(ウポポイ内)

2022年4月18日
よみもの「芸術の森美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.12

芸術の森美術館

2022年3月22日
よみもの「市立小樽美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.11

市立小樽美術館

2022年2月21日
よみもの「小樽芸術村 ステンドグラス美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.10

小樽芸術村 ステンドグラス美術館

2022年1月17日
よみもの「本郷新記念札幌彫刻美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.9

本郷新記念札幌彫刻美術館

2021年12月20日
よみもの「北海道立近代美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.8

北海道立近代美術館

2021年11月16日
よみもの「札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.7

札幌芸術の森野外美術館 気持ちよい屋外空間で出会う作品群

2021年10月18日
よみもの「北海道立帯広美術館 自然との対話」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.6

北海道立帯広美術館 自然との対話

2021年9月21日
よみもの「中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.5

中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館 ブロンズと友情の作家

2021年8月16日
よみもの「北海道立函館美術館 西洋文化の窓口、東洋美術の精華」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.4

北海道立函館美術館 西洋文化の窓口、東洋美術の精華

2021年7月19日
よみもの「小川原脩記念美術館 失意と回復の狭間で」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.3

小川原脩記念美術館 失意と回復の狭間で

2021年6月21日
よみもの「北海道立旭川美術館 北の木工を支える人々」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.2

北海道立旭川美術館 北の木工を支える人々

2021年5月17日
よみもの「北海道立三岸好太郎美術館」の見出し画像です
「常設」に会いに行く vol.1

北海道立三岸好太郎美術館

2021年4月19日
先頭へ戻る