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「常設」に会いに行く vol.19

北一ヴェネツィア美術館

公開:2022年10月17日
「常設」に会いに行く
貴族の衣装をつけた人形が椅子に座る家族の居間
貴族の衣装をつけた人形が椅子に座る家族の居間

小樽に再現された貿易港と商人の街 ヴェネツィア

北一ヴェネツィア美術館は、株式会社北一硝子が建てたヴェネツィア風の建物に本場ヴェネツィアのガラスを招いて作った美術館である。

 この建物のモデルは1748年から1772年にかけて建築家ジョルジョ・マッサーリがグラッシイ家のために建てたもので、1840年からは他家の所有になり、その後何回も持ち主を変えてきた。現在は安藤忠雄がリノベーションして美術館になっている。元の家にはフレスコ画も施されていたが、小樽では再現されず、全体的に日本人向けにあっさりと仕上げている。建物中央の吹き抜けを囲む回廊が特徴である。

 応接間、書斎、居間、食堂、寝室などが家具・調度とともに再現展示され、季節によってしつらいを変えている。

 その昔、ヴェネツィア共和国はガラス製品を他国の貴族や国家元首への贈答に用いたり、高値で売り上げたりするためにその技術を秘匿し、職人を島に閉じ込めて技術が外に漏れないようにしたという。繊細に編み上げたかのようなレースガラス、極限まで細く吹いて仕上げた足の上に薄く薄く吹いたグラス部分を接着したフルートグラス、さまざまな金属によってブルーや緑に発色し、ガラス質の絵付けを施したエナメルガラスなど。そのアクロバティックなまでの技術は繊細で、怖ろしくてうっかり触れることもできない。

 それらの伝統を今でも受け継ぐ技術者に依頼して復刻したガラス類が展示され、なかなかの力作である。一方で現代作家によるクラゲや魚などをガラスに閉じ込めたようなものや抽象などの意欲的な作品も購入している。

 またヴェネツィアのレースも非常に有名であり、ほんの数十年前までレースの専門学校もあったほどで、これもまた外貨を大いに稼ぐ伝統工芸であった。その伝統をひいてこの館でもテーブルには上質な麻にレース刺繍をほどこしたクロスを用いている。そもそもヴェネツィアは東方からの布の輸入で財を重ねたことを思い出す。
乾淑子(美術史家)

北一ヴェネツィア美術館

小樽市堺町5-27  tel:0134-33-1717
※受付時間 9:00~17:30
最終入場17:00
※特別展最終日の2022年12月5日(月)は16:00閉館(最終入場15:30)
入場料金 一般700円(特別割引あり)
詳しくは問い合わせを。

洗礼の情景を描いた装飾的なグラス
洗礼の情景を描いた装飾的なグラス
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