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「常設」に会いに行く vol.17

ニトリの小樽芸術村に4月に加わったアールヌーヴォーの館

公開:2022年8月15日
「常設」に会いに行く
有機的な植物文様を配した家具でまとめた「「アールヌーヴォーの間」
有機的な植物文様を配した家具でまとめた「「アールヌーヴォーの間」

 この春に小樽で開館したばかりの西洋美術館にはステンドグラス、アールヌーヴォーのガラス、近代のブロンズ彫刻などの他に家具がある。

 西洋家具の美術館などはどこにもありそうで、実は日本ではあまり聞くことがない。これは工芸の一種であり、芸術至上主義の立場からは軽んじられるものだったからなのかもしれない。そういう意味ではこの美術館は歓迎されるものだ。

 和家具の古いものは駒場の日本民藝館をはじめとしていくつかの所蔵館をすぐに思い出せるが、古い西洋家具のコレクションというと日本では簡単には思い出せないのである。しかし現代の私たちの生活はとっくに西欧化されているのであり、そのルーツを探るようなものがあっても不思議ではないだろう。今売り出されている住宅には、畳の部屋はひとつも無い場合が多いのであるから。

 カップボード(食器棚)、ソファ、テーブル、鏡などを様式や時代のテーマ毎に模擬的に部屋にしつらえて見せるやり方は家具展示の定石であり、歴史を振り返るものである。照明器具、じゅうたんなども含めてのしつらいである。ただ、より意欲的な展示を求めるならば、上流家庭のみならず、庶民の家具の歴史も展示してほしい。またカトラリーの歴史(例えば、ナイフ、スプーン、フォークの順で登場した)とか、櫃(ひつ)から簞笥への移行などの日本にも通じる展開等も観たいのである。

 ステンドグラスも、聖書の物語を語る教会芸術ではなく、一般の個人宅の明るい居間や客間の飾りとして求められた花や鳥などを配したものとなっている。それはガラスという素材が安価で大衆的なものになりつつあったこの時代特有のものである。

 そして、何と言ってもこの西洋美術館を含む小樽芸術村の文化的貢献は、取り壊される可能性すらあった銀行、倉庫などの建築物を残し活用する方法として美術館を選んだことではないだろうか。これに続く試みが次々と登場し、小樽がロンドンのようになる日が来るのを密かに期待したい。
乾淑子(美術史家)

西洋美術館 (小樽芸術村内)
小樽市港町6-5  電話 0134-31-1033
休館・開館時間:5~10月は無休9:30〜17:00
11~4月は毎週水曜 (祝日の場合はその翌日)、年末年始 10:00~16:00
(※企画展の開催・展示替えなどによる、臨時休館や休館日変更の場合あり。詳しくはお問い合わせください。
JR小樽駅から徒歩約10分。提携駐車場割引あり。
ジャック・グリュベール(仏)作 1905〜1910制作 《睡蓮とアイリス》
ジャック・グリュベール(仏)作 1905〜1910制作 《睡蓮とアイリス》
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