
大谷翔平選手が新記録を打ち立てる度に比較されるベーブ・ルース。その名前を聞くと、ある漫才コンビを思い出す。
「ベイブルース」31年前、大阪社会部の記者だった私は、関西のお笑い新人賞を総なめにしていた2人を取材した。
ボケの河本栄得さんとツッコミの高山トモヒロさんは大阪・桜宮高校野球部の同期生。卒業後、水泳の指導員をしていた高山さんが、河本さんの働く居酒屋でひょっこり出会ったのが結成のきっかけだった。
同期の「雨上がり決死隊」や後輩の「ナインティナイン」らが東京に進出し、テレビで売り出しているのを横目に、ベテランにまじって「なんばグランド花月」や「うめだ花月」に出演していた。本格派のしゃべくり漫才で鳴らし、地元の大阪で着々と力をつけていた。
所属する吉本興業は「ネタを百本ぐらい作ってどんな状況でも耐えられるようになれば、東京でも間違いなく人気が出る」と期待していた。
当時、超売れっ子だったにも関わらず、2人は同世代の記者の拙い質問の一つひとつに真剣に答えてくれた。そのまっすぐさに引かれ、ファンになった。
取材から1年4カ月後の1994年10月31日、河本さんは劇症肝炎に倒れた。私はFMラジオのニュースで彼の死を知った。スターへの階段をのぼり始めた矢先だった。
54歳の高山さんはいま、新たなコンビで芸人を続けている。ベイブルースを忘れないために、ファンの一人として応援していきたい。
朝日新聞 前北海道支社長 山崎靖
(6月1日付で札幌から東京に転勤しましたが、引き続きペンを取らせていただきます)