

「原発用地取得ゼネコン介在/関電の依頼を受け/発覚避け偽装契約」
1999年10月11日の朝日新聞朝刊1面に大きな見出しの記事が載った。関西電力が石川県珠洲市で計画していた原子力発電所の予定地周辺の土地を、大手ゼネコンを介して秘密裏に取得していたことを報じるスクープだ。その4年後、計画が凍結された。
社会部記者だった私は取材班の末端にいた。課せられたのは関電側の証言を得ること。反対派住民の家に泊まり込みながら当時の社員を探し出し、ひとり一人に「直当たり」をした。だが、全く相手にしてもらえない。結局、紙面になったのは「当社は関知していない」という関電の公式見解だった。
21年後、後輩たちが雪辱を果たしてくれた。2020年7月25日と翌26日の朝刊連載「原発と関電マネー」で、関電の元課長が重い口を開いた。「反対派に悟られないように関電の名前を隠した」「原発は本質的に危険を抱えとるから水面下の動きがないと造れんし、動かせん」「潜水艦と同じや」。
珠洲原発が建設されていたら
元日に発生した能登半島地震から3週間後、朝日新聞「声」欄に、こんなタイトルの投稿があった。「惨状を見るにつけ、震源に近い珠洲市に原発建設の予定があったことを思い出す」という富山県の短大教員(65)は、文章をこう締めくくっている。
「今となっては命懸けで反対した人たちに感謝しなければならない」
感謝されるようなことは何もできなかった。ただ、地元の人たちが守りたいと願った奥能登の風景と当時の悔しさは、忘れていない。(終わり)
朝日新聞 前北海道支社長 山崎靖