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「サツゲキ」との出会いは強烈だった。何しろ初鑑賞作品は、2010年のR指定コメディー「ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(笑)。当時は中央区南3西1の「ディノスシネマズ札幌劇場」で、札幌に住み始めた私にとってシネコンチェーンともミニシアターとも違う独特のセレクションが楽しめる第3の居場所に。だから2019年の閉館はショックで、翌年「サツゲキ」の名での復活に歓喜。クラウドファンディングに協力したら、階段の踊り場にネームプレートが掲げられたことは、ささやかな誇りになった。
移転先は狸小路5丁目、「札幌プラザ2・5」を改修するというアイデアも秀逸だった。ここは1925年開館の「三友館」に端を発する映画上映の拠点で、私も「東宝プラザ」時代からたくさんの思い出がある。一方、「サツゲキ」も1919年の「札幌館」まで遡るそうで、100年を超える2つの映画文化の流れを汲む劇場の誕生に震えるような思いがしたものだ。
とはいえ当の「サツゲキ」は、そんな歴史を振りかざすことなく、インド映画や現代ホラー、アニメ、テレビ映画、香港アクション、名作リバイバルなど相変わらずのラインアップぶり。気になるタイトルを見つけては駆け込み、あの暗がりに身を沈めた。時には理解不能なヘンテコ作品もあったけれど、それも含めて、映画の世界がいかに広いかを気取らず教えてくれる、頼れるアニキのような存在だった。
同じ映画でも「サツゲキ」で観たから面白かった気がするのは、私だけだろうか。たぶん、スタッフらの手作り展示グッズ(「JUNK HEAD」人形や「TALK TO ME」の手!)をはじめ、地元映画ファンのフリーペーパーや祝い花、寄せ書きなどで彩られた館内の雰囲気も影響しているはず。開場までの待ち時間、ロビーから狸小路の雑踏をぼんやり眺めたり、チラシを集めたりする時間も幸せだった。
再出発してまだ5年、こんなに早くお別れするとは思っていなかったので、言葉が見つからない。「サツゲキ」がもたらしてくれた、たくさんの出会いに感謝しながら、階段に刻まれた映画「風と共に去りぬ」のセリフを噛み締める。「After all, tomorrow is another day!(明日は明日の風が吹く)」。
(「映画と握手」執筆ライター・新目七恵)
