

辻石材工業株式会社の札幌軟石採掘所に行くと、軟石のでき方がよくわかる。
熱がこもらなかった上の層は降り積もった火山灰がそのまま残る。その下、熱が逃げずにこもった層はガラス分が溶けて固まって石になっている。真ん中に行くほど固くなり、もっと掘り進むと、当時の地面近くで冷やされて固まらなかったのでまた軟らかくなる。真ん中の固い層からだけ軟石が採れる。
Q:先生は石がご専門なんですね。
岡本先生:はい、地質学や地学が専門なんですが、いろいろな石を研究しています。
札幌軟石、正式にはなんという石なんでしょう。
「溶結凝灰岩」というのが正式名ですね。火山が爆発したときの火砕流の火山灰が堆積し、石になったものです。札幌軟石に関しては4万年前、支笏湖ができたときの火山の噴火でできたものです。
へえ〜。この種類の石はこのあたりに特有のものなのでしょうか?
いえ、火山の噴火があって火山灰が積もればどこにでもできます。
だったら、いろいろなところにあるわけですね。
はい。世界中で見られますね。ただし、ある程度の量がないと切り出すほどのものはできないですね。色や風合いも微妙に違います。
札幌軟石は今も切り出してますね。
そうです。このくらい豊富な量の溶結凝灰岩があるということは、火山の噴火がとてつもなく大きなものだったということです。支笏湖付近から札幌市内まで火砕流が来たのですから、その規模がいかに大きかったかわかります。今起こったら大変なことです。
怖いですね・・・

「軟らかいから、叩くと崩れやすいですね
当時は北海道には人が住んでいなかったと思われますが、火砕流が通ったところは地上にあったいろいろなものを巻き込んでいきました。
では、軟石の中にもいろいろなものが入っているということですか?
よく見るとわかりますよ。白いツブツブが見えるでしょ。
はい、軟石の特徴ですね。
これ、軽石です。
ほお、あのお風呂で使う軽石ですか?
そうです。軽石はマグマの泡で、成分はガラスです。
マグマの泡!ガラスですか?!
ガラス、あるいは二酸化ケイ素と言ってもいいです。マグマの表面が急速に冷やされてできます。泡だから、孔(あな)がたくさん空いているでしょう。
そういえばそうですね。じゃあ、このグレーのところは?
これもガラスで、マグマが固まったものです。あと、他の石や砂利も巻き込んでますね。
軟石、実はガラスだったんですね?!
そうです。ガラスは摂氏900度くらいで溶け始めます。マグマの火砕流、火山灰はそれ以上の温度がありますが、地面に触れたり空気に触れたりすると急速に冷えます。冷えた部分はさらさらの火山灰として今も残っています。
あ、火山灰の採集地、札幌にもたくさんありますね。
基礎工事などによく使われますね。あれは固まらなかったものです。
なるほど〜。
火山灰の層の上と下はすぐ冷えましたが、積もった火山灰の真ん中は熱がこもって逃げないので、ガラスが溶けた状態になります。これが接着剤の役割を果たし、冷えて石となった訳です。
ははあ、じゃあ軟石は積もった火山灰の真ん中の層にできたということですね。
そういうことです。溶け方が激しいと固めに、そうでないと軟らかめになります。4万年経ってますが、いくら圧力がかかっても時間が経っても、固まらないものは固まらないのです。溶けて固まったというのがポイントです。
溶結凝灰岩、名前の通り、「溶」けて「結」ばれた訳ですね!
そういうことですね。それから、黒いツブも見えるでしょ。
あ、ちょっと入ってますね。これは?
炭化した木や植物だと思いますね。
木、ですか?
はい。火砕流が巻き込んだものですね。焦げて炭になって、そのまま固まってしまったのでしょう。

4万年前の木が入っていると思うと、感慨深いですね〜。
石はねぇ、よく見ると面白いんですよ!
ふつうの人はあまりよく見ませんよね。
そうなんですよ!だから学生にはよく見て考えるように言ってます。
軟石、軟らかい石とはよく言ったもんですね。
適度に空気を含んで、加工しやすい、それでも丈夫、という特徴があります。だから建築用に多く使われたのですね。のこぎりでも切れますから。
他にどんな特徴がありますか?
耐火性が抜群です。ある程度の厚みがあれば外から火に焼かれても、反対側は全く熱くなりません。
だから倉庫に使われたのでしょうね。
急に軟石がいとおしく思えてきました。今日はありがとうございました。