

釧路市の住宅街で偶然、行商する人を見つけた。リヤカーの主は、新木トシ子さん。お天気の日の昼ごろ、和商市場あたりからひと回りするという。住宅や店の前で停めるたびに人が出てきて、おしゃべりしながら買物が始まる。「昔は一台全部、お魚でした」というが、小さな背中が隠れそうな荷物の山に魚は2箱ほど。あとは野菜、果物、豆腐に袋菓子まで、まるで動くコンビニだ。新木さんはお客に合わせて荷物のシートをあちこちめくり、魚の味噌漬けや鯨ベーコンなどを手際良く見せる。車で来た末広町のスナックのママは、「今夜のお通しよ」と、煮豆やきんぴらを買っていった。
釧路市内の露天商は、昭和20年代後半には盛んだったという。その人々が、昭和29年に和商市場の基礎をつくった。特集で取材した瀬野商店・山口さんの祖母は、くしろ丹頂市場(和商市場隣)の場所で露天商をしていたといい、そこに新木さんの姿が重なる。今年米寿の新木さんは、釧路市内のリヤカー部隊で唯一の現役だ。
(参考:釧路和商市場HP釧路新書25 「街角の百年 北大通・幣舞橋」)
