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河村清明(講談社)
登場する地域:日高地方

題名の「相馬眼(そうまがん)」とは、馬の能力を見抜く技術や見識のこと。日高地方の軽種馬産業と日本競馬界の発展に大きな足跡を残した岡田繁幸の生涯を描いたドキュメンタリーだ。著者は雑誌『ダ・ヴィンチ』創刊後に文筆活動へ転じ、競馬を題材とした作品を多数執筆してきた書き手であり、その取材力が本書にも遺憾なく発揮されている。
岡田繁幸は、生涯をかけて卓越した相馬眼を磨き上げ、多くの馬を重賞勝利へ導き、牧場を日本有数の規模へと発展させた人物だ。また、中央と地方の垣根をなくし、競馬をより広く愛されるものにするため奔走した姿勢から、「岡田総帥」と呼ばれた。しかし、長年の悲願であった日本ダービー制覇だけはついに果たせなかった。
本書では、岡田が相馬眼をどのように培ったのか、その眼で選び抜かれた一頭一頭の馬たちの物語、ライバルの社台グループを越えようとした志、そして進むべき道をめぐる葛藤が丹念に描かれる。根底に流れるのは、地元産業の発展と、競馬に携わる人々の幸福を願う一貫した思いである。
岡田氏は2021年3月19日、71歳の誕生日に逝去した。著者は長年にわたり氏を取材し、後進に託した思いや最期の姿を克明に記録している点も本書の大きな読みどころである。
筆者自身も静内農業高校長として氏と面会した経験を持つ。「教育は本当に大事ですね」と語り、協力を惜しまなかった穏やかな姿は今も記憶に残る。静内を離れた現在も、岡田氏の志が受け継がれ、日高地方がさらに発展することを願う気持ちは変わらない。