北原モコットゥナシ編著 小笠原小夜 絵(北海道新聞社)
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他民族の文学作品を深く理解することは容易ではない。言葉の背後には歴史や文化、世界観が存在するため、それらを知らなければ表面的な理解にとどまり、「分かったつもり」になってしまう危険がある。
その課題を見事に乗り越えているのが、アイヌ民族の研究者・北原モコットゥナシ氏が監修・執筆した『ミンタㇻ①アイヌ民族27の昔話』である。本書には、知里幸恵の翻訳で知られる「銀の滴降る降るまわりに」などの代表的な物語が収録されているが、単に作品を掲載するだけではない。なぜ語り手がフクロウの神なのか、なぜ神が人間に射られるのかといった疑問に対し、アイヌのカムイ観や生活文化を丁寧に解説し、物語の背景にある世界観を読者に伝えている。
本書の最大の魅力は、昔話と文化解説が有機的に結びついている点にある。読者は物語を楽しみながら、その背景にある精神文化や暮らしにも自然に触れることができる。文学と文化を往復しながら理解を深められる構成は、他に類を見ない価値を持つ。また、小笠原小夜氏による温かみのある挿絵も、アイヌの自然や暮らしを豊かに想像させてくれる。
多文化共生が求められる現代において、本書はアイヌ文学の入門書として優れているだけでなく、文学と言語文化を一体的に学ぶ教材の理想形を示している。国語教育に携わる人々にとっても、多くの示唆を与えてくれる一冊である。