今野 敏(集英社文庫)
登場する地域:函館

本書は、函館市内の某高校に入学したばかりの男子生徒の、初めての寮生活を描いた作品である。
北海道中から生徒の集まる、函館にあるカトリック系の男子校に入学した「僕」は寮生活を始めた。新しい生活が始まるという解放感を味わっていた「僕」は、入寮して3日目の夜に行われた「入魂会」という寮の儀式で浮かれた気分を叩き直される。
「入魂会」によって緊張の日々を送る中、「僕」は新たに知り合った友人たちと勉強そっちのけで夜の「レコード室」に集まり現実逃避をする。そこで発生する寮内での先輩の死亡事故。学校や警察は自殺と発表するが、それに疑念を持つ仲間たちと真相を探ることにする。
死亡した先輩は「入魂会」の首謀者だった。「入魂会」に関わる者には死が訪れるという噂を横に、「僕」たちは真相を追う。止めに入る先輩たち、にわかに登場する刑事、そして死亡した先輩と同じ部活の友人や、先輩の彼女。さまざまな立場の人間が「僕」たちの前に現れる。果たして真相はいかに。
寮という異質な空間に生きる少年たちのちょっと大人へと背伸びをしようとするさまを、主人公の初々しい恋心も交えながら描いた小説である。さまざまな登場人物との待ち合わせ場所が現実の函館の風景であることも見逃せない。現代の高校生が読むと少し世代のズレを感じるかもしれないが、大人として読むと「そういう時代があったなあ」と思い返さずにはいられなかった。