山田秀三(北海道新聞社)
登場する地域:道内各所

地名。それは何ということもない土地の名前だ。なぜアイヌ語由来地名がこんなにも魅力的なのか。その理由は、旧記にある地名を手がかりにして、現代の地図にない地形を「発見」する宝探しができるからかもしれない。
例えば、著者は松浦武四郎の日誌に「オソウシナイ」を見つける。他の同名類名地名から推定すると、「川尻に・滝が・ついている・川(オ・ソ・ウシ・ナイ)」という意味だ。著者はこれを手がかりに積丹半島西岸で大まかな位置を見当付け、一本一本の川を点検して歩き、地図にない滝を、ついに「発見」する。
彼の名はアイヌ語地名研究の第一人者、山田秀三。道内のみならず、東北地方のアイヌ語由来の地名の意味も数多く残した。
この『アイヌ語地名を歩く』は、地名解釈や現地調査の他、アイヌ語研究者金田一京助や知里真志保からの学恩、アイヌ古老との心温まる交流、アイヌ語地名を大切にしてほしいという願いなどの「おりおりの思い出」が99集められている。山田の著作に地名解釈の専門書が多い中、本書は数少ない随筆集であり、読みやすい入門書として最適である。
著者が地名の由来となった場所を「発見」する時、地域の忘れられた地形に光が当てられ、その地名を呼んだ遠い昔のアイヌ語話者と著者と、そして読者は一本の線でつながる。そんなロマンを求めて宝探しをする、時間と空間移動の旅を著者とともに楽しんでみてはいかがだろうか。