河﨑 秋子(文藝春秋)
登場する地域:札幌、三笠

河﨑秋子は人と動物との共生のあり方を問い続けてきた作家である。本書では札幌に住む大学生岸谷万智(マチ)の眼を通して真摯にその問題を問いかけている。
たまたま恋人の部屋で狩猟雑誌を目にしたこと、その後大学の近くにあった堀井銃砲店を訪れ、そこで猟友会会長の新田、さらに彼の師匠であり三笠在住の80歳女性、佐藤綾子(アヤばあ)と実際に会うことを通し、ハンターになりたいという彼女の意志は強固なものになった。
マチはただ撃ちたいという熱にうなされているわけではない。むしろハンターはどうあるべきなのか、その時々においていかなる行動を取るべきか、さらに仲間との協力体制のあり方などについて、彼女は真摯な態度で反省を繰り返す。そこには彼女を取り巻く周囲の人たちの大きな影響がある。
それだけに「ゆるハンター」の名前で動画配信をする身勝手な若者たちの姿は実に対照的だ。彼らは市販の肉をばらまいて熊を移動させ、その熊を狙うところを動画として配信しようとする。そのことで山菜採りに来ていた夫婦が熊に襲われ、妻が負傷する場面も描かれている。このため猟友会のメンバーが熊の駆除に動く。動画配信者の一人は肉をばらまいた証拠隠滅を図ろうとして山の中に逃げ隠れ、マチたちをよけい手こずらせることにもなった。迷惑千万と言わざるを得ない。
ここに作者の静かな怒りを感じることができる。
この「地域を知る一冊」シリーズも今回を持って最終回となる。北海道ゆかりの作品を紹介する場を与えていただいたことに対して改めて感謝申し上げたい。