
2年程前、シニアライフ相談サロンに80代のご夫妻がお見えになりました。お二人とも要介護の認定をお持ちでした。
奥様:「食事の支度が辛いんです。そろそろ食事を出してくれるところに入りたいんです」
ご主人:「どうして、そんなところに入りたいんだ。まだまだ、できるだろ」
憂いを帯びた表情で遠くを見つめる奥様。ご主人は目を見開きまっすぐ前を見つめていました。
今年、ラベンダーの咲く頃、「そろそろ本格的に住み替えを考えていまして……」。ケアマネジャーからご連絡をいただき、見学のためお迎えに上がると、奥様は認知機能低下も進みベッドに横になり、「出かけるの?いってらっしゃい」と小さな声。
ご主人はよろよろしながら玄関を出て、階段を降りようとすると動きが止まります。息子さんに右側から、当サロンスタッフに左側から支えられ一段一段ゆっくりと三階から降りて行きます。やっとの思いで、一階に着くと大きなため息一つ。
部屋は別々になりましたが、ご主人は、「私が想像していた施設とは違うんだね」と、住宅に納得されました。帰り道、両脇を支えられ一段一段踏みしめるように三階まで上り「少し前までは、こんなんじゃなかったんだよ」と、憂いを帯びた表情でつぶやきました。
ご自宅に入ると奥様に報告。「決めたぞ。いよいよ引越だよ」奥様は「どうして?私、食事作っているでしょ?どうして?」カッと目を見開きまっすぐご主人を見つめていました。
「あの時の……」と呆然と立ちすくむご主人。息子さんの説明で奥様は納得されました。引越当日、ご夫妻はそれぞれに抱えられながら一段一段ゆっくりと降りて行きます。そして一階まで降りきると大きなため息一つずつ。
2カ月が過ぎた頃、ご主人からお電話で「デイサービスで妻が笑っているんだ。あんな笑顔だったなって思い出したよ。私もね、少しはしっかり歩けるようになったんだよ。あの時(2年前)、妻の話を真剣に考えていたら、もっと早くこんな風に暮らせたんだね」と。
Merry Christmas……!