
「一人暮らしでしょう。そろそろいろんな事が大変になってきたの。地元では私の入れる所がないのね。だから札幌で探そうと思って」。90歳代の女性からの切実なご相談です。
90歳代とは思えないほどしっかりとした受け答えです。「私はね、広い部屋がいいの」。一軒家に住まわれる方にありがちな部屋の広さに対するご要望が強く感じられます。「広い部屋」、実際どれくらいの広さを広いというのかは、その人それぞれの感じ方があり、非常に難しいところです。どれくらいの広さが必要なのかは実際に見ていただかないと判断がつかないものです。自立向けのマンション型の高齢者向け住宅では「広さ」はある程度期待することができます。
しかし想像通り、実際、お会いしてみると自立向けの住宅をご案内できるようなお身体の状態ではないということは一目瞭然でした。医療や介護の面も考慮しなければなりません。もちろん資金面も念頭に置いて何ヶ所かパンフレットをご覧頂きます。地方なので何度も足を運んでいただくことは出来るだけ避けたいと思いながらも「狭いわね」の一言で見学終了となります。
ご本人の資金的な事や本音でお話を伺わせていただき、ある晴れた日、二度目の来札となりました。見学先の住宅で車椅子を準備していただき感染対策を講じゆっくりと中に入って行きます。バリアフリーとなっているので移動はスムーズです。コロナ感染者が増えてきている状況なので人数制限がありましたが、面談室で入居相談員の方のご説明を伺い、お部屋の中を見せていただくことができました。通常タイプと広いタイプを比較され、毎月の費用を確認されながら少しお考えになり選ばれたお部屋はやはり広いタイプです。
「ここなら茶箪笥が入るわね」とにっこり。住宅の場所などではなく、あくまでも茶箪笥の入る広さが必要だったのです。伺ったところ横幅が160cm高さも180cmくらいあるそうです。お気に入りのお茶碗やカップが入っており、下の引き出しには衣類を入れているとの事。ご本人にとっては使い慣れた、そして思い出もたくさんしまっている茶箪笥なのでしょう。
お身内の方より、「とてもかたくななんです」と一言。
夏の名残を感じる頃には、雪の心配をすることなく生活されていることでしょう。
一般社団法人シニアライフサポート協会
NPO法人札幌高齢者住まいのサポートセンター 代表理事 風間 理可