朝日IDをお持ちの方はこちらから
AFCのログインIDをお持ちの方(2024年7月31日までにAFCに入会された方)はこちらから
新規入会はこちらから


期間限定で運行している「SL冬の湿原号」から黒い煙が立ち上り、レトロな情緒が漂う釧路駅前。道東に位置する釧路は、夏の冷涼な気候と広大な湿原が有名で、全国の厳しい暑さから逃れて訪れる人々にとってオアシスのような存在だ。夏の間だけ滞在する読者にも届けていると話すのは、時原俊太朗さん。エリアの端から端まで車で1時間かかるASA釧路南部の所長を務める。
時原さんは物心がついた時にはすでに釧路で暮らしていた。朝日新聞の現地印刷の開始とともにASAの所長となった父のもとで育ち、家業として新聞販売店を見てきた。小学校に上がると当然のように配達を手伝うようになったという。今年92歳になる母は、86歳まで配達をしていたというから驚きだ。父は仕事に心血を注いだ人だった。当時、新聞の輸送手段であった鉄道が駅に着くのは朝の6時30分で、それからでは配達が遅くなってしまうことを懸念し、札幌に新聞を取りに片道5時間を往復した期間があったという。そんな父の口癖は「朝日新聞が1番!」。その言葉は時原所長の記憶の片隅に今も残っている。
それでも新聞販売店に勤める気はさらさらなかった。自動車販売店で働き、結婚もし、会社員として働いて約20年を過ごした。ある日、父が出先で倒れそのまま帰らぬ人となってしまった。突然のことに戸惑いもあったが、販売店を支える周囲の人々に縁を感じたこともあり、父の跡を継ぐ決意をした。
それから約25年。父が守ってきた釧路の配達網を守り続けている。現在、従業員は22人。昨冬は幸いにも怪我人は出なかったが、今後を考えると従業員の高齢化は深刻な課題だ。従業員に無理はさせられないと配慮する一方で、家族に負担をかけている場面も少なくない。従業員はもちろん、所長自身も計画的に休暇を取れる環境を作ることで、若者にも関心を持ってもらえる職場環境を作ることが目標だと語る。
釧路川に架かる幣舞橋は、夕日の名所として知られるが、時原さんが目にしているのは朝日。夜明けとともに昇る太陽の光は、配達を終えた心身を和らげ、日々彼にエールを送っている。
(文・写真/新開なつみ)
ASA釧路南部 所長 時原俊太朗
〒085-0832 釧路市富士見2-1-13
