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取材の前、滝川市役所の11階にある「みんなの食堂」で食事をとりながら、空知の景色を眺めた。かつて炭坑で栄えたこの空知の広い地域に、新聞を届けるのは中村浩一さんだ。中村さんはASA滝川をはじめ、ASA砂川、ASA上砂川、ASA赤平の所長を務める。滝川市で生まれ育ち、2002年に入社してからASA滝川と共に23年を歩んできた。入社当時のASA滝川の所長は、周囲も一目置く厳しい人物であった。「うちは他と違って厳しいぞ」と言われて覚悟はしていたものの、想像を超える辛い日々に「何度も辞めたいと思った」と笑いながら話す。そんな中でも励みになったのは、同世代の仲間たちの存在だった。切磋琢磨してきた彼らが次々と独立していく姿を目の当たりにし、中村さんも静かに自分の将来を見つめた。そして自然と浮かび上がってきたのが所長という道だった。やがて厳格な所長からASA滝川の今後を託されたときには、心の底から嬉しかったと感慨深げに話す。現場が長かったため、所長としての立ち振る舞いに戸惑いも多かったが、下積み時代を共に過ごし、一足先に所長となった仲間たちの存在に救われたという。中村さんの「周囲の協力があって今やれている」と繰り返す姿が印象に残る。

そして中村さんの胸には、忘れられない仲間の姿がある。10年前の2015年6月6日、同僚が飲酒運転の車に巻き込まれて命を落とした。以来、中村さんは交通安全の指導を徹底する。そこには従業員に二度と同じ悲劇が起こらないようにという強い思いが込められている。
所長になって5年。中村さんは従業員に寄り添う姿勢を大事にしてきた。自身の経験はもちろんだが、1人1人と対話を重ね双方にとってより良い労働環境を追求してきた。人手不足が深刻化するなか、「困ったことはない」と語るその言葉の裏には、強固な信頼関係がある。もちろん読者とのつながりも忘れない。2年前にお店独自の「スタンプカード制度」を発案。スタンプを貯めてくれた方にプレゼントを渡している。周囲との関係を大切にする中村さんだからこその素敵なアイデアだ。
「うちの期待の新人です」と若手社員を紹介してくれる中村さんと奥様の姿は、明るく温かい。安定した労務管理と、従業員への思いやりが、ASA滝川の空気をつくっているのだと感じた。滝川からの帰り道、外は土砂降りの雨だった。それでも私の心は晴れやかな気持ちで満たされていた。
(文・写真/新開なつみ)

ASA滝川 砂川 上砂川 赤平
所長 中村浩一
〒0730023 滝川市緑町2-1-30