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札幌から電車を乗り継いで、揺られること約2時間。車窓に映る景色から、徐々に雪が消えていった。白老駅の2つ隣、北吉原駅の近くにある新聞販売店は、佐々木幸一さんが所長を務めるASA萩野。白老で暮らして約1年半になる佐々木さんは「散歩していると地域の人に会えるから、読者の顔が見えるよ」と爽やかに語る。その言葉には白老の人々との良好な関係性がにじんでいる。佐々木さんは関東で暮らしていた20歳の時、新聞販売店の募集チラシが目に留まったことをきっかけに、この業界で働くようになった。それから札幌で所長として独立し、白老で再スタートを切った。都市部は多くの人が暮らしているが、隣近所がどんな人か分からないことも少なくない。白老に住み、地域の人とのコミュニケーションがもたらす豊かさを実感する日々だ。当初は白老へ来ることに難色を示していた奥様も、今ではご近所付き合いを通じて農作物や魚介類をおすそ分けしてもらうなど、ここでの生活に馴染んでいるという。
新聞販売店で働き出して3年目の23歳のとき、適性を見出され店長を任された。当時周囲の店長は40歳前後が多かったというから、大抜擢であることがうかがえる。自分よりもベテランの従業員も多く、それぞれに敬意を示しながらまとめあげることは難しかった。歯がゆさや失敗も数多く経験した。しかしその経験から対話を通じて人間関係を構築することの大切さを学び、それが今に生かされていると話す。また長く経営に携わってきたことから、所長という仕事は向いているという自信もある。自分の裁量で取り組み、挑戦し、それが成果として表れたときの達成感。その代わり大きな責任が伴うことも忘れてはいない。
昨年9月、10月に白老は記録的な豪雨に見舞われた。地元の人も経験したことがないと話すほどで、佐々木さんのスマホには道が川と化した様子が映し出されていた。車も流されるほどだったという。雪害のリスクは少ないが、昨今各地で自然災害が多発し、絶対に安全な場所はないのだと思い知らされる。新聞販売店では、常に人命を重視して配達ができるかの判断を迫られている。
白老町は畜産も漁業もさかん。たらこを商品化している企業を挙げれば、両手では足りないほどだという。中でもたらこをおいしくいただけると紹介してくれたのは、虎杖浜沿いにある「虎杖浜カフェ」。店内は木の温かみを感じる空間だ。新鮮なたらこがのったクリームパスタは、口の中でたらこがほろほろとほどけ、クリームと絡み合い、やさしいうまみがふわっと広がる逸品。外のテラス席には天然木のテーブルが置かれ、海を目の前に食事を味わえる。今時期は寒さが厳しいが、夏になるとオーシャンビューを満喫する人々でにぎわっているという。
「これからも、地域や読者の人との関係を希薄にはしたくない。いつでも対応できる所長でいたい」と話す佐々木さんの語り口と、虎杖浜の波は穏やかだった。(文・写真/新開なつみ)
ASA萩野 所長 佐々木幸一
