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五稜郭公園からバスで5分も揺られていると、存在感のあった五稜郭タワーも見えなくなり、住宅が建ち並ぶ。周囲には緑豊かな公園が点在しており、そのひとつ「せせらぎ公園」は名前の通り小川のせせらぎが心地よく、涼やかな空間が広がっていた。
坂を上った先、函館山を望む見晴らしの良い場所にあるのがASA函館本通。迎えてくれたのは、所長の廣田輝政さんと、太陽のように明るい笑顔の奥様。夫婦二人三脚で、新聞を届けている。
札幌市出身の廣田さんはかつて13年間ガス会社に勤務。休日に幼い子どもたちと家族の時間を過ごすこともままならない多忙な日々に見切りをつけ、函館地区の所長として配達区域を拡大したばかりだった兄を手伝うことにした。「最初は新聞のことなんて何も分からなかった」と笑顔で話す奥様も、激動の日々に涙を流すことも多かったという。廣田さんや周囲に教わりながら、今では事務作業や集金業務などの重要な仕事も担う。
札幌と地域性の異なる函館での配達は苦労も多かったと廣田さんは語る。枝番まで同じ住所がいくつもあり、配達すべき住宅の確認や坂の多さ、シカやヒグマが目撃されることも少なくない。それでも廣田さんはその自然の豊かさやのんびりとした空気感を魅力に感じている。「函館山は朝の景色もいいよ。よく配達終わりに車で登って独り占めしていた」と教えてくれた。子どもたちと何度も竿を並べた「緑の島」や「大森浜」もお気に入りのスポット。イカ漁の明かりがともる夜の港は幻想的だという。
ASA函館本通の所長となって9月で丸2年。夫婦とアルバイトスタッフで切り盛りする日々は決して楽ではない。それでも「この仕事を続けたい」と語る廣田さん。新聞部数の減少にも向き合いながら、これからも続けていける新聞販売店の在り方を模索している。
今年の春、大学と高校に進学した二人の息子たちは家を離れたが、お盆には家族そろって団欒の時間を過ごすことができた。前職では叶わなかったかけがえのない時間。「配達エリアのおすすめスポットはまだまだ開拓中だね」と夫婦で話す。ASA函館本通が届ける新聞には、家族との暮らしを大切にしながら、函館の地に寄り添う温かさが詰まっている。
(文・写真/新開なつみ)
ASA函館本通 所長 廣田輝政
〒0410843 函館市花園町20-22