

札幌では少しずつ春の訪れが感じられる中、枝幸郡浜頓別町にはまだ雪が残り、あまたの白鳥がクッチャロ湖で羽を休めている。ちょうど一年前、私はASA浜頓別を訪ねた。町の人と話す中で、「島谷さんのところに来たのね」と明るく言われたことが印象に残っている。その一言からASA浜頓別の所長である島谷一美さんが、町の人々から信頼されていることが伝わってきた。
島谷さんは稚内市で生まれ育ち、現在は浜頓別で新聞販売店を営みつつ、週末には稚内の自宅で家族と過ごしている。元々勤めていた地元の信用金庫を退職し、他の職場を経験したのち、義母の知り合いという縁もあって新聞販売店の社員となった。実は中学生の時、お小遣い稼ぎに朝刊配達をしていた経験もあり、新聞販売店に関わるのはそれ以来だった。勤め始めて1年たち、「新聞販売店って大変だ」と思い始めた頃、所長が急逝。島谷さんを所長に推す声に背中を押され、継ぐ決心をした。現在は信用金庫時代の同僚であった妻に経理業務を任せ、配達を担う10人の従業員と新聞を届けている。以前は高校生のアルバイトもいたが、今は50代から80代が中心。中には往復50キロを運転して届けてくれている人もいるという。
浜頓別町は人口が3千人ほどの小さな町だが、自然の魅力があふれる。クッチャロ湖を望むコテージはいつも予約で埋まっており、これから暖かくなるにつれてさらに予約が取りづらくなるという。ベニヤ原生花園やウソタンナイ砂金採掘公園も気になっていたが、どちらも開園は6月頃から。残念に思っていると、島谷さんに浜頓別町の隣、猿払村にある「猿払村道エサヌカ線」という道を教えていただいた。全長約16キロメートルにわたる直線道路で、電柱や看板もなく北海道の広大さを全身で感じられる映画のような景色だ。
町が春を迎える準備をするように、島谷さんもまた、浜頓別で新聞を届ける日々を重ねながら、その営みを次の世代へつないでいくための道を、模索し続けている。
(文・写真/新開なつみ)

ASA浜頓別 所長 島谷一美
〒098-5711 枝幸郡浜頓別町北1条3丁目22