このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME  >よみもの一覧  >新聞記者に聞いてみた  >「自由な取材、記者の仕事が楽しくなった」(2026/3/17)
新聞記者に聞いてみた vol.36

自由な取材、記者の仕事が楽しくなった

公開:2026年3月17日
新聞記者に聞いてみた
公開:2026年3月17日
2026年1月4日付 北海道地域面
2026年1月4日付 北海道地域面

 今回は北海道報道センターで道政を担当している鈴木優香記者です。福岡から転勤してきて2年。この地の魅力をさまざまな企画を通して伝えています。

― お正月の連載企画を2年続けて発案されたのですね。

鈴木:昨年は北海道に住む外国人を取材するシリーズを採用してもらいました。今年は午年。デスクから「アイデア、ある?」と聞かれ、以前から北海道で生産、育成される馬やかかわる人たちを取材したいと思っていたので、「馬と生きる」の企画を提案しました。

― 馬のどんな話を書きたかったのですか?

鈴木:もともとは馬を通して社会のテーマを探るような記事を考えていました。取り上げた一つに馬搬(ばはん)があります。山から切り出した木を馬の力で搬出するもので、林道いらず。環境問題や森林保全について考えるきっかけになるといいなと思いました。また、引退馬を看取る「養老牧場」を通して家畜の命に関心をもってもらえたら、と。

― サラブレッド編も担当されています。

鈴木:名馬の半生をたどる記事も書きました。競馬のことはほとんど知らなかったので、11月〜12月は競馬用語を覚えたり、名馬の系譜を遡ったりすることに費やしました。

― 連載は終わりましたが、馬のことではまだ書きたいことがあるそうですね。

鈴木:浦河にあるオルタナティブスクール「森のがっこう」に興味があります。不登校の子どもなどが馬とふれ合いながら、学んでいるのです。厚真町には馬が平地を耕し、フンがたい肥になる、そこで採れたカボチャをたき火で食べる、そういう学童保育もあります。教育の現場に馬が取り入れられ、その世話を通して命に触れ、環境問題を学んでいるのが興味深いです。

― 前任地は福岡だったそうですね。北海道の気候には慣れましたか?

鈴木:雪道にはだいぶ慣れました。昨冬は5回転びましたが、今年はまだ転んでいません。それより大変なのは暑さでした。昨年の夏に体調を崩したのですが、その要因の一つは自宅にエアコンがなかったこと。入居時に不動産屋さんに「エアコンを使うのはひと夏に3回」と聞いてなめていました。道庁もエアコンが効いていなくて、会見室は蒸し風呂みたい。午後9時ごろまで原稿を書きながら会社で涼み、帰宅後は保冷剤で体を冷やしていました。最後にはスポットクーラーを購入。地球温暖化の猛威を肌で感じました。

― アルゼンチン生まれで、外国での暮らしの経験もあり、外国人との共生をテーマに原稿を書いてこられました。日本国内で排外主義的な動きが強まっていることをどう感じていますか?

鈴木:昨年夏の参議院議員選挙では「日本人ファースト」を掲げる参政党を担当しました。街頭演説会や個人演説会で、日本に住む一部の外国人を名指しして批判する候補者に、聴衆がうなずいていたのがショックでした。通っていたアメリカの中学校では国籍や人種に多様性があるのが当たり前だったし、高校も大学もそうだったので。相手の国籍によって態度を変えるという今まで触れたことのない考えに戸惑いました。

― 参政党支持者の人たちにも取材されたのですね?

鈴木:北海道では実際に土地が外国資本に買われています。支持者は「水資源も買われてしまうのではないかと思うと怖い」とおっしゃる。じわじわと恐怖が広がっていると感じました。ここに多文化共生という正論だけをぶつけても響かないと考えるようになりました。一方で、北海道では介護や観光、酪農の現場で外国人労働者なしではやっていけない現状があります。どうやったら歩み寄れるようになるのか、記事を通して探っています。

― その一つが、団地の「雪かき」の記事ですね。

鈴木:はい。石狩市で技能実習生が多く住む団地の雪かき教室について書きました。ベトナム出身で雪を見るのも初めてという実習生たちに、団地のお年寄りが雪かきのコツを伝授する。団地のご年配の方たち10人ほどに話を聞いた中から、印象的だった言葉を記しました。見出しにも取られた「手がかかるので、これ以上増えないでほしい思いもあるけれど、日本の労働力不足のために来てくれているので歓迎しなきゃとも思うんです」という言葉です。矛盾する二つの感情に折り合いをつけようとしている人の言葉は、読者に刺さるんじゃないかなと考えました。

― 読者からはどんな反応がありましたか?

鈴木:コメントが来ました。「地方団地の共生の取り組みが具体的に報じられている点がいい。手がかかるという声が載っているのがとてもリアルだと思う」「完全に不安や不満がなくなることはないのは当然のことだが、完璧にわかり合えることをつい望んでしまうので、こういった現実的なことを知れるのがいい」

葛藤がありながらも道を模索している人の隣に立って、取材を続けたいと思いました。

― 北海道で思い出深い取材はどんなことですか?

鈴木:昨年2月に先輩記者と取材に行った陸別町の「しばれフェスティバル」ですね。氷のかまくらで一晩過ごす耐寒レースです。野外でアイスクリームを作ったり、ぬれタオルを回して凍らせたりと実験三昧でした。北海道ならではの体験でしたね。北海道では何でも自由に取材できて、記者の仕事が楽しくなりました。これからも読者に届く記事を書いていきたいです。

鈴木優香 記者
東京都出身。2022年朝日新聞社入社。西部報道センター(福岡)を経て、24年4月から北海道報道センター。25年4月から道政を担当し、教育や農業の担い手の思いを取材。
※このページの内容、執筆者の肩書きなどは執筆当時のものです
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください
先頭へ戻る