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新聞記者に聞いてみた vol.34

「内と外を分けるもの」に関心

公開:2026年1月19日
新聞記者に聞いてみた
2023年7月16日付け福岡朝刊
太田記者の書いた博多祇園山笠のルポ。(2023年7月16日付け福岡朝刊)

 今回お話を伺ったのは、2023年入社の太田記者です。北海道報道センターの最若手です。福岡・西部報道センターで2年間勤務した後、2025年4月から北海道へ。幼少期をアメリカで過ごした経験や、災害・事件の現場を経て育まれた視点は、いま「アイヌ」「外来種」など、社会の境界にあるテーマへと向かっています。

― 北海道報道センターで一番若い記者さんなんですね。

太田:はい。2023年入社で、最初は博多駅前にある西部報道センターに2年間勤務しました。昨年4月に北海道へ異動してきました。

― 小学校時代をアメリカで過ごしたそうですね。

太田:生まれは愛知県ですが、出身と聞かれるといつも悩みます。小学校の6年間をアメリカ・ケンタッキー州で過ごしていて、地元と言える場所がなく、自分のアイデンティティーに迷いながら学生時代を過ごしていました。

― 多感な6年間がアメリカというのは大きいですね。

太田:そう思います。現地校に通っていて、学年では唯一の日本人でした。最初は英語もわからず、トイレに行くのも苦労しました。露骨な差別も受けました。そのときに、アメリカ人の話し方や身振りを覚えたくて、人をじっくり観察する癖がついたと思います。自分がどのように話すか、どう振る舞うかを必死に考えていました。最後の方は演劇部にも所属していました。

― 新聞記者を志したのはいつ頃からでしたか。

太田:いろいろ考えてみると、4歳のときの体験が原点になっていると思います。

― ずいぶんと早いですね!

太田:4歳のときに「世界の国ぐに」という図鑑を買ってもらって、これにドはまりしました。どんな小さな国にも1ページ割かれていて、その国の文字や文化が紹介されていました。アラビア文字やペルシャ文字を真似して書いたりしていました。そこに愛知万博が重なりました。世界の国に興味津々でしたから、とにかく連れていってくれと頼み込んで、幼稚園を休んで年間パスポートで100日近く通いましたね。本で見た国の人たちが目の前にいることが楽しくて、

子どもだからけっこう丁寧に相手をしてくれました。「実際に会ってみたらこんな感じだったよ」と、それを「伝える」ことがとにかく楽しかったんです。

― 子どもの頃から“取材者”だったわけですね。

太田:そうですね。進路を考えたとき、詳しく分かっていたわけではありませんが、「新聞記者」と書いていました。大学も迷わず新聞学科へ進みました。

― 初任地の福岡ではどんな担当を?

太田:1年目は事件担当でした。年始に石川・能登半島地震が起きてからは、1月2日に金沢入りし、翌日から輪島で取材しました。亡くなった方の数や行方不明者数を本社に送り続けていました。

― 入社して1年以内でたいへんな取材でしたね。

太田:とても自分の無力感を感じた取材で、自分の中では転機となりました。

― 無力感とは?

太田:事件取材のなかで、取材のイロハのようなものを覚えてきたと感じていたタイミングでした。ですが、いざ災害の現場に放り込まれると、いったい誰に何を聞けばいいのか、現場の状況がどうなっているのかまったくわからない。今どんな情報が必要で、どこに行けばそれが聞けるのかと途方に暮れました。自分は何もできないじゃないかという思いが、強烈な原体験となりました。

― その体験を経て、変わったことはありますか?

太田:今目の前に居る相手に、明日会えなくなるかもしれないと考えるようになりました。それから取材の前に入念に準備をするようになりました。

― 福岡では博多祇園山笠にも出たとか。

太田:取材先の方に「出てみんと分からん」と言われて参加しました。1トンを超える山笠(やま)を担いで5キロを全力疾走する、本当に命がけの祭りです。

― 実際に出てみて、何が見えましたか。

太田:外から見ると排他的に見えた祭りが、実は「同じ土地に住む者なら誰でも受け入れる」共同体だったことです。外国人も転勤族も、中学生から高齢者まで、肩書きを外して同じ山笠を動かす。身体を通じたつながりを初めて実感しました。

― 北海道勤務が希望だったそうですね。

太田:大学時代から、東京に住むアイヌ民族のドキュメンタリーを制作していました。アメリカでマイノリティーとして生きた経験から、日本でも「出自を隠さなければ生きづらい人」がいるのではないかと考えるようになったんです。民族の問題に限らず、「内と外を分けるもの」に関心があります。

― 外来種について連載もしていましたね。

太田:北海道大学構内で猛毒を持つ恐れのある植物が見つかったのがきっかけでした。外来種は単なる“悪者”ではなく、人間の営みと深く結びついている。故郷を懐かしんで持ち込まれた植物もある。その複雑さが面白いと思いました。

― これからも多様なテーマの取材を期待しています。ありがとうございました。

太田悠斗 記者
2023年朝日新聞入社。福岡・西部報道センターを経て2025年4月から北海道報道センター勤務。現在は司法を担当。アイヌ民族や外来種など、社会の周辺にあるテーマを継続取材中。
※このページの内容、執筆者の肩書きなどは執筆当時のものです
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