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新聞記者に聞いてみた vol.32

温暖化止まらず、北海道はフグ日本一

公開:2025年11月17日
新聞記者に聞いてみた

前回に引き続き今回も2年ぶり2回目の登場の根室支局の山本記者です。前回は地球温暖化に関わる海洋生物資源のお話でしたが、さて2年経って状況はどう変わっているのでしょう。聞きました。

−前回は温暖化の影響でサンマが小ぶりになったと聞きました。今年のサンマは例年になく大きかったとか。どうしたのでしょう?

山本: 今年は餌となる動物プランクトンの成長が良かったんです。そのため一時的に魚体が大きくなりました。ただ、長期的には海の温暖化がこれからも進んでいくので、全体の傾向としては魚体の小型化が続くことになると思います。

−今後はずっと豊漁に、ということはないのですね?

山本: ないと思います。なぜ今年エサのプランクトンが多かったのかは、いま研究者たちが解明を進めているところです。

−2020年に『温暖化で日本の海に何が起こるのか』という本を出されていますね。

山本: 海の温暖化が生き物にどう影響するかを追ってきました。北海道に来て驚いたのは、これまであまり獲れなかったフグが大量に水揚げされていたことです。時間をかけて取材し、データをまとめた記事を新しい紙面企画の「データジャーナリズム面」に掲載しました。

― フグといえば西日本のイメージですが、北海道でそんなに?

山本:そうなんです。取材した羅臼の定置網にも、秋サケを獲るはずの網にマフグが群れをなして入っていました。マフグは「フグの女王」と呼ばれ、トラフグに匹敵するおいしさです。これまで「西のフグ、東のアンコウ」といわれてきましたが、今や北海道がフグの水揚げ量で全国一になっています。もう北海道の「名産」と言ってよいレベルです。ブリも日本一です。羅臼漁協などではブランド化もしています。新たな収入源にはなりますが、北海道ではブリを食べる文化があまりないので、道内では消費が追いついていません。

― フグが北海道で日本一とは本当にびっくりですね。定置網といえば、その中に潜ったと聞きました。

山本:はい、マフグの群れは羅臼の定置網の中に潜ってこの目で見ました。もちろん漁業者の許可を得て、安全確認をきちんと行った上での取材です。地元の水中写真家の協力を得て実現しました。

― 潜水取材をされることは前回もお聞きしましたが、定置網の中に潜るのは山本さんくらいでは?

山本: 昨年は、東京本社のカメラマンと一緒に羅臼の定置網に潜りました。今年、特に印象に残ったのはサバの群れです。サバたちが一斉に方向を変える瞬間は、まるで一つの生き物が動いているようでした。

― 米国のトランプ大統領は国連演説で「地球温暖化はでっちあげだ」と言っていましたが……。

山本: 気候変動に関しては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という国際的な組織が、世界中の科学者の研究成果を集約しています。その最新の「第6評価報告書」では、「現在進行している地球温暖化は人間の活動によるものであることに疑う余地はない」と明記されました。これは過去の報告書にはなかった強い表現です。どこかの国や一部の研究者の意見ではなく、世界中の科学者たちが合意して出した結論なんです。

― それに伴う海水温の上昇ですね。

山本: 日本近海の海面水温はこの100年で約1.3度上がっています。北海道の東方沖の場合は、黒潮の北上も影響しています。暖かい黒潮が強まった結果、北海道の海はこれまでにない高い温度になりました。

― なるほど。暖かい地域の魚がどんどん北上して来るのですね。

山本: 新しい特産品が増える、と言って喜んでばかりもいられません。例えば北海道の特産品のコンブはこの30年で生産量が3分の1に減りました。海水温の上昇で成長しづらくなっていると指摘されています。

― 陸では“ドカ雪”も増えています。温暖化と関係あるんでしょうか。

山本: 海が温まると水蒸気が増えます。大気中の水蒸気の量が多い状態で寒気が入ると、一気に雪になります。つまり、ドカ雪も温暖化に伴う「極端現象」の一つなんです。この傾向は今後も続くと思います。

― 今年2月のようなドカ雪はもう勘弁してほしいですね。ありがとうございました。

山本記者の執筆したブルーバックス
山本記者の執筆したブルーバックス(講談社)
山本 智之記者
東京都日野市生まれ。1992年朝日新聞社入社。新潟支局、
浦和支局、東京科学部、つくば支局、大阪科学医療部デスク、朝日学生新聞社編集委員を経て、2022年9月から根室支局長。
科学ジャーナリスト。
朝日学生新聞社編集委員を経て、2022年9月根室支局長。
科学ジャーナリスト。
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