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今回は「遊軍」と呼ばれる記者さんです。決まった担当は持たず、自分が興味を持った対象を取材するのが一番の仕事。何か楽しそうな気がしますが、どんな取材をしているのでしょう。
まず「遊軍記者」とはどんな取材をしているのか、簡単に教えてください。
佐々木:(以下、佐:)私の場合、一応空知24市町村とスポーツを担当していますが、いわゆる記者クラブには属さず、特別な「持ち場」はありません。何を取材するかは自分で決めます。気になったものは取材してみるというスタンスで、現在はそのリサーチに費やす時間が9割という感じでしょうか。
芦別の市議会議員で、最高齢プロレスラーの方を取材した記事が印象に残っています。よくこういう人を見付けましたね。
佐:実は東京勤務時代にアントニオ猪木さんの取材をしたことがあります。北海道に来て旧知のスポーツ記者に「北海道に猪木さんの敵役だった元プロレスラーがいる」と聞いたのがきっかけです。しばらくそのままにしておいたのですが、旭川に取材に行ったついでに、挨拶だけでもしてみようと寄ってみたら、話が面白く、連載記事にしました。
記事を読んで、とても魅力的な方だと感じました。
佐:人を描くのが好きです。人の人生を追体験してみたくて新聞記者になったようなものです。実家は農家で都市的な生活には縁がなかったので、就職してもいろいろなところに行って、いろいろな人に会えるのは楽しいだろうなと思ってこの職業を選びました。
人にフォーカスしながら、芦別市の現状が伝わる記事だったと思います。
佐:元産炭地域で、炭鉱が無くなったことにより急速に勢いが無くなった地域です。数字やデータで表すこともできますが、人を通してそれを伝えることもできると思っています。
東京勤務時代のデジタル版(withnews)に書かれた記事を拝見しました。アントニオ猪木さんをはじめ、慶大卒でAV女優から日経新聞記者になった女性、アダルトグッズメーカーの女性広報、テレビ番組「家、ついて行ってイイですか?」について行く企画、合コン女王に学ぶ就活攻略法、等、普通の新聞記事ではなかなかお目にかかれないような題材ばかりで、楽しく読みました。
佐:いわゆる「正統派」の新聞記事とは違うかもしれませんね。特異だったり、奇異だったり、世間から見るとちょっと違和感のある人間に興味があります。自分にはできない人生だから、ということもあるかもしれません。これらはデジタル編集部にいたときに書いた記事で、紙の新聞にはほとんど載りませんでした。当時はデジタル版は社内でもメインストリームではなく、「デジタルが大事だ!」という今の社内の雰囲気とは大違いです。世の中どう変わるかわからないものです。
こういう面白い人たちにどうやってコンタクトするのですか?
佐:まず電話ですね。面白そうと思ったらまず電話。もちろんすんなりたどり着けることは少ないですが。
猪木さんのときは、彼の行きつけのバーで張り込んだようですね。
佐:はい、なかなか連絡が取れなくて。よく行くバーがあると聞き、そこに3時間ほど粘りましたが現れず。諦めて帰るときにたまたま路上で遭遇。名乗って取材の申し込みをしました。お付きの人に追い払われるかと思いましたが、ご本人が「取材を受けるから明日事務所に来なさい」と言ってくれて、話を聞くことができました。誠実な方でした。
国会議員としては異色の方だったと思いますが、そのような「ちょっと違った人」に興味が向くのはなぜなんでしょう?
佐:徳島にいたとき先輩に、警察の発表をなぞってばかりではダメだぞと言われ、毎日何を書いたらいいのか悩んでいたときがあります。「朝起きて寒かったらどうする?」と聞かれ「ストーブつけます」と言ったら「君は普通の人だな」と言われました。気温が何度くらいなのかとか、気象台に聞くとか、気になることがあったら、これは原稿になるのではと思わないとダメだと言われました。日々生きている中で、違うな、違和感あるなというものの正体を突き詰めていけばニュースになる、という思いを今も大事にしています。
これからも人を中心とした取材を中心にしていかれるのでしょうか。
佐:それが最も得意とするところなので。いわゆる「本筋」の新聞記事取材はあまり得意ではなくて、それは記者としての弱点かもしれませんが。
いろいろな人に会ってきた佐々木さんから見て、北海道人は何か特徴がありますか?
佐:もうめちゃくちゃ優しいと思います。よそ者に対して特に優しい。成績が奮わない北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督に大きな不満の声が上がらないのも、その懐の深さの表れじゃないかと思います。
ああ、なるほど。何か納得しますね。ありがとうございました。
記者山形県鶴岡市出身。2004年朝日新聞社入社。徳島総局、奈良総局、東京編集センター、デジタル編集部、名古屋報道センター、津総局を経て、2021年から北海道報道センター勤務。