このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
>HOME  >よみもの一覧  >新聞記者に聞いてみた  >「海の生き物から地球の環境が見えてくる」(2023/12/18)
新聞記者に聞いてみた vol.9

海の生き物から地球の環境が見えてくる

公開:2023年12月18日
新聞記者に聞いてみた
11月8日、山本記者の書いた夕刊一面トップ記事。
11月8日、山本記者の書いた夕刊一面トップ記事。

 今回は道東・根室の支局長であり、科学ジャーナリストとして海の生き物や環境問題についても精力的に執筆活動を行っている記者さんを紹介します。そんな方がなぜ根室に? 聞いてみました。

 朝日新聞の記者であり、科学ジャーナリストという肩書きでも活躍していらっしゃいます。珍しいと思うのですが、どういう経緯なのでしょう。

山本智之(以下、山:)まず、最初の勤務地の新潟で、新潟水俣病の取材に深く関わったのが環境問題に関心を持つきっかけでした。この取材を通じて、企業は利潤を追求するあまり、人の健康や環境を顧みなくなることがあるのだと感じました。その後、前から好きだった海の生き物を中心に科学ジャーナリストとしても仕事をするようになり、今に到ります。

 なるほど。海の生き物との関わりは?

山:こちらは私の趣味で、大学院の1年生のときにスキューバダイビングの資格を取りました。そして水中写真も始めました。子どものころから地元の多摩川で魚を獲ったりもしていましたから、水生生物には親しんでいましたね。

 魚に関しては、ブルーバックスで本を書くほどの専門家と聞いています。もともとそのような勉強や研究をしていたのですか?

山:いえ、全く。大学院では社会心理学をやってましたから。

 そうなんですか! なぜこんなに専門的な知識をお持ちなのでしょう?

山:新潟水俣病や環境問題のことを取材していた関係で、科学部(当時)に配属になりました。自分の関心もあったので、記者という立場で、これまで数え切れないくらいの科学者にインタビューしました。これはもう、その道の権威から個人授業を受けているようなもので、おのずと自分の知識も蓄積されていきます。かれこれ30年間もやっていて、相当詳しくなり、自分で判断できるようにもなりました。これは役得でした。

 書かれた記事を拝見すると、ストレートに環境問題を取り扱うというよりも、身近な話題に引き寄せて語るようなものが多くて興味を引かれます。例えば北海道のブリの水揚げが20倍になったとか、サンマが小型化しているとか、「え!」と思いますね。

山:やはり食卓につながっている環境問題は関心を持って読んでもらえると思い、なるべく身近な例を提示するようにしています。

 確かに、サケが獲れないとか、サンマが高いとか、北海道らしくない状況が続いていますね。

山:何年か前のことですが、海の温暖化が漁業に影響を与えていて、このままだと北海道のサケの水揚げは激減するだろうという記事を書いたことがあります。その予想通りの事態になってしまいました。

 深刻な事態ですね……。昔、例えば縄文時代も地球は暖かかったというような話も聞きますが、やはり今の時代は異常なのでしょうか?

山:確かに暖かい時代もあったのですが、問題は温暖化のスピードなのです。緩やかに気温が変化していけば、それについていけるように生物も適応ができます。ですが、今の変化は余りにも急で生き物が対応できません。例えばシシャモは非常に生息域が限定されている魚で、逃げ場がありません。激減しているのはそんな理由によります。過去100年で日本近海の海面水温は 1.24度上がっています。これは海の中で生きている生物にとっては相当インパクトが大きいです。

 サケが食べられなくなる日が来るのでしょうか…。

山:サケは低い水温を好みますから、どんどん北の海に分布がシフトしていくでしょうね。その代わり、これまで獲れなかったような魚が獲れるようになる。ブリの漁獲高で北海道が全国1位になったのも、そういう変化の現れです。

 データだけではなく、自分で海に潜って観察し、取材もしてらっしゃいますね。

山:はい、自分で潜って実際に現場を見る、そこで起きていることを伝える海中レポートを何度も行っています。これまでに南極海やガラパゴス諸島でも潜りました。羅臼では最近、ホッケの繁殖の様子を海中取材しました。オスの「ホッケの父さん」が一所懸命卵を守っている様子を海中レポートしました。

 ところで、なぜ根室支局なんですか?希望して根室へ?

山:いえ、自分では希望していません。根室なら水産や海洋生物の取材もやりやすいだろうということで、配慮してくれたのかもしれません。

 根室と言えば、北方領土の問題もありますね。

山:そうなんです。根室ではとても大切な取材テーマですね。前任の根室支局長は元モスクワ支局長でしたが、私はこちらに来てから初めて取材するテーマです。これからはそちらの方面もしっかり取材していく予定です。

山本 智之 記者
東京都日野市生まれ。1992年朝日新聞社入社。新潟支局、浦和支局、東京科学部、つくば支局、大阪科学医療部デスク、朝日学生新聞社編集委員を経て、2022年9月根室支局長。科学ジャーナリスト。
※このページの内容、執筆者の肩書きなどは執筆当時のものです
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください

新聞記者に聞いてみた バックナンバー

よみもの「生まれ故郷の北海道で取材する醍醐味」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.37

生まれ故郷の北海道で取材する醍醐味

2026年4月20日
よみもの「自由な取材、記者の仕事が楽しくなった」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.36

自由な取材、記者の仕事が楽しくなった

2026年3月17日
よみもの「まだまだ伝え切れていないものがたくさんある。」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.35

まだまだ伝え切れていないものがたくさんある。

2026年2月16日
よみもの「「内と外を分けるもの」に関心」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.34

「内と外を分けるもの」に関心

2026年1月19日
よみもの「社会の弱者に寄り添う記事を」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.33

社会の弱者に寄り添う記事を

2025年12月16日
よみもの「温暖化止まらず、北海道はフグ日本一」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.32

温暖化止まらず、北海道はフグ日本一

2025年11月17日
よみもの「知床に通い続けて25年 変わった環境」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.31

知床に通い続けて25年 変わった環境

2025年10月21日
よみもの「20年以上ぶりに故郷へ 念願の1人勤務」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.30

20年以上ぶりに故郷へ 念願の1人勤務

2025年9月17日
よみもの「三たび北海道の地へ 原発、JR、核のごみ」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.29

三たび北海道の地へ 原発、JR、核のごみ

2025年8月18日
よみもの「金融危機、9.11、リーマン、そして北海道」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.28

金融危機、9.11、リーマン、そして北海道

2025年7月22日
よみもの「水俣の経験が変えた記者人生」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.27

水俣の経験が変えた記者人生

2025年6月16日
よみもの「デスクとしての1年、「現場」への思い」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.26

デスクとしての1年、「現場」への思い

2025年5月19日
よみもの「冷凍牛乳が拓く十勝酪農の新たな可能性」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.25

冷凍牛乳が拓く十勝酪農の新たな可能性

2025年4月22日
よみもの「スポーツ記者が語る野球の魅力と取材最前線 」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.24

スポーツ記者が語る野球の魅力と取材最前線

2025年3月17日
よみもの「本人ではいかんともしがたい問題がある」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.23

本人ではいかんともしがたい問題がある

2025年2月17日
よみもの「朝の焼き立てパンの香りがするような記事を」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.22

朝の焼き立てパンの香りがするような記事を

2025年1月20日
よみもの「世界遺産の知床に傷跡を残したくなかった。」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.21

世界遺産の知床に傷跡を残したくなかった。

2024年12月16日
よみもの「自分が書かなければ知られなかったことを伝えたい」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.20

自分が書かなければ知られなかったことを伝えたい

2024年11月18日
よみもの「クマの現場を知るために、狩猟免許取りました」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.19

クマの現場を知るために、狩猟免許取りました

2024年10月21日
よみもの「駒大苫小牧初優勝、大谷の日ハム初年も取材」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.18

駒大苫小牧初優勝、大谷の日ハム初年も取材

2024年9月17日
よみもの「親になり、いろいろなことが自分ごとに」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.17

親になり、いろいろなことが自分ごとに

2024年8月20日
よみもの「自分で体験する、を大切に」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.16

自分で体験する、を大切に

2024年7月17日
よみもの「ウクライナ、北海道、米国」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.15

ウクライナ、北海道、米国

2024年6月17日
よみもの「人の人生を追体験できる面白さ」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.14

人の人生を追体験できる面白さ

2024年5月20日
よみもの「スーパーアスリートたちと接して」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.13

スーパーアスリートたちと接して

2024年4月16日
よみもの「やっぱり現場に戻りたかった」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.12

やっぱり現場に戻りたかった

2024年3月19日
よみもの「エネルギー、半導体、JR、流通…… 北海道経済を幅広く取材」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.11

エネルギー、半導体、JR、流通…… 北海道経済を幅広く取材

2024年2月19日
よみもの「事件事故、起こったことを伝えるだけではなく」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.10

事件事故、起こったことを伝えるだけではなく

2024年1月15日
よみもの「海の生き物から地球の環境が見えてくる」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.9

海の生き物から地球の環境が見えてくる

2023年12月18日
よみもの「写真は時間を遡れない。先読みして現場へ。」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.8

写真は時間を遡れない。先読みして現場へ。

2023年11月20日
よみもの「「選挙ロジ担」〜市町村数の多い北海道は一苦労」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.7

「選挙ロジ担」〜市町村数の多い北海道は一苦労

2023年10月16日
よみもの「「人の役に立つかも」〜自身の体験を記事に」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.6

「人の役に立つかも」〜自身の体験を記事に

2023年9月19日
よみもの「編集委員ってどんな記者なんですか?」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.5

編集委員ってどんな記者なんですか?

2023年8月21日
よみもの「地方での1人勤務ってどんなですか?」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.4

地方での1人勤務ってどんなですか?

2023年7月18日
よみもの「知床観光船事故を取材して1年」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.3

知床観光船事故を取材して1年

2023年6月19日
よみもの「連載「地方自治クライシス」のできるまで」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.2

連載「地方自治クライシス」のできるまで

2023年5月16日
よみもの「紋別を目指した旅人、到着したのは?」の見出し画像です
新聞記者に聞いてみた vol.1

紋別を目指した旅人、到着したのは?(2023年3月6日 朝日新聞北海道版道内面 19ページ)

2023年4月18日
先頭へ戻る