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前回に引き続き、今回も若手の記者さんです。学生のときからの新聞社希望、それも朝日新聞に絶対に入りたかったとか。その熱意はどこから?
新聞記者になりたい、という強い思いを持っていたそうですね。
上保:就職活動のときも新聞社しか考えていませんでした。それも朝日新聞しか考えていなかった、と言ってもいいかもしれません。
そう思うに至ったのはなぜですか?
上保:脳性まひのあるきょうだいがいます。いろいろな困難があることを隣で見てきました。本人ではいかんともしがたいことが多く、社会の仕組みに問題があるのではという所に関心が向いていきました。記者として学びながらそれを見ていきたい、というのが一番の理由です。障害やマイノリティー、生きづらさといったものに対して、朝日ならいちばんのびのびと取材できるのではないかと思っていましたが、入ってみたら実際にその通りでした。
学生の頃から関心は高かったのですか?
上保:大学では政治学を学んでいたのですが、障害者が直面する問題は結局政治の問題に結びつくと感じました。しかし、障害のある議員はとても少ない。ちょうど参院選で障害のある2人の議員が当選し、どう政治が変わるのか、それが卒業論文のテーマとなりました。後に『重度障害者が国会の扉をひらく!』(社会評論社、2021年)として、ちょうど入社のタイミングで出版されました。
入社時にすでに自著を出版している記者さんも珍しいと思います。北海道は2カ所目の勤務地ですね。
上保:千葉に2年いました。警察を担当していましたが、いろいろな事件が起こる本当に忙しいところでした。自分のテーマをじっくりやるという時間はあまりありませんでしたが、それでも時間を見つけてその頃からアイヌ民族のことなどを取材していました。
北海道ではどんなことを担当しているのですか?
上保:司法を担当しています。札幌地裁・高裁での訴訟を中心に司法の動きを追っています。社会のいろいろなトラブルは裁判所に持ち込まれます。それを取材して学んでいくのがとても勉強になります。さらに、札幌には人権問題に関心が高い弁護士が多いと感じます。社会的意義のある訴訟が多いのです。昨年3月には同性婚について、高裁レベルで初めての違憲判決が出ました。札幌のろう学校で日本手話の授業が無くなったことに関する訴訟もありました。
2023年、札幌市西区で車のタイヤが外れる事故があり、その初公判も担当しました。今回は不正改造の車だったですが、実は冬場にタイヤが外れる事案はけっこうあることがわかりました。記者がいることによって、そこに社会的な意義付けを行い、事故を防ぐことができるかもしれません。法廷で起きていることを社会的な文脈で伝えるのが大事な仕事かと思います。
「ヒップホップは社会福祉だ」という記事も書いていますね。そうなんですか?
上保:生きづらさを抱えている若者がいます。学校にいるのも気まずい。かつては「不良」のイメージが強かったラッパーたちですが、そんな人たちがヒップホップに出会って友達ができていく。「MCバトル」と呼ばれる闘いで、悪口を言い合うようなバトルでは相手を傷つけてしまいます。そうでないルールを作って運営しているラッパーたちを取材した記事です。
アイヌ民族のことも取材のテーマとなっていますね。
上保:北海道にいてアイヌ民族を取材しようと思ったときに、私は歴史や社会構造をほとんど何も知らないということに気づきました。何十人もの人に話を聞き、本も何十冊と読み、今ある和人との非対称は、歴史的経緯があってそうなっていることが分かりました。うわべだけ見てもだめだと思いました。石井ポンペさんという1945年生まれの高齢のアイヌの方を深く取材することによって、社会構造にほんろうされ生き抜いてきた人の物語を書きました。その方を軸に社会を見ていったら、伝わりやすいのではないかと思いました。
今後はどのような分野を取材したいですか?
上保:私の一貫している視点は、個人はどうしても社会の構造からは逃れられない、ではその中でどう生きるかということで、それが自分自身が生きる上でのテーマでもあります。
でもそろそろ異動のタイミングとか?
上保:そうなんです。やはり社会福祉分野を担当したく、そこから日本の行く末を考えたいと思います。厚生労働省はいずれ担当したいです。
記者としてフォローされるのを受け付けていると聞きました。
上保:朝日新聞のデジタル版には「記者フォロー」という機能があって、北海道では私ともう1人の記者が受け付けています。読者の声も聞きながら、どういう意図があって書いたのかということも伝えていきたいです。読者と一緒に考えながら進みたいです。
1998年生まれ。広島県出身。2021年朝日新聞社入社。千葉総局を経て、23年5月より北海道報道センター。道警や司法を担当し、障害者やアイヌ民族の取材にも取り組む。