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新聞記者に聞いてみた vol.37

生まれ故郷の北海道で取材する醍醐味

公開:2026年4月20日
新聞記者に聞いてみた

今回の記者は、北海道報道センターで選挙や道政などを担当している畑中謙一郎記者です。生まれ故郷で仕事をしたいと2021年、東京から北海道に転勤してこられました。ふるさとの魅力を多角的に発信しています。

—東京などで長くスポーツを担当してこられました。なぜ北海道に?

畑中:東京スポーツ部では野球やゴルフを担当してきました。とても面白かったのですが、50代になり、少し変化が欲しかった。部長との面談で「北海道、行く?」と言われて「行きます、行きます」と二つ返事で転勤を決めました。地方で仕事をする、とりわけ生まれ故郷で仕事をする醍醐味があると思っています。家族を東京に置いて単身赴任し、5年になります。

—故郷で仕事をする醍醐味とは?

畑中:大学は北大だったので、同期が道庁や市役所で幹部になっていて、人脈が取材に役立つことがあります。また北海道は広いので、土地勘があるのは強みだと感じています。

—東京スポーツ部札幌駐在として日本ハムなど地元プロチームを担当。24年12月から、北海道報道センター員になり、スポーツ以外のことも取材するようになりました。

畑中:異動は自分から希望しました。北海道に戻ってふるさとの今を見ると、さまざまなことが新鮮に見えてきたんです。スポーツ以外のテーマでも広い視野で記事を書きたいと思ったんですね。昨年の参院選、今年2月の衆院選も担当しました。

—子どものころ、社会科見学に行った会社を、ほぼ半世紀ぶりに取材されたそうですね。

畑中:ゴム長靴製造・販売の「ミツウマ」という会社です。1919年創業。本社は小樽市にあり、60年代には年間500万足を生産し、国内シェアトップ。長靴といえばミツウマ、でした。50〜60代の人は意識せずとも履いたことがあるはずです。小学校4年生の時に学校の社会見学でバスに乗り、小樽のゴム長靴工場に行きました。当時は札幌近郊の小・中学校の社会見学の人気スポットだったんですね。ゴムを成形する時の強い匂いがして、ものづくりの迫力を感じました。工員が手作業で色とりどりのゴムを張り合わせていくのも、面白かった。

—その後も関心を持ち続けていたのですか?

畑中:労働集約型産業ですから、人件費の安い海外にはかないません。70年代から斜陽になり、1983年に会社更生法を申請したと知りました。私が高校生の時です。その後、大学を出て東京の銀行に就職し、朝日新聞に転職しました。初任地の長崎支局にいた時、「ミツウマ、再建へ」という小さな記事を目にしました。そのころから、いつか北海道に戻ったら取材したいと考えていました。

—念願がかなったのですね。

畑中:ミツウマは東京の不動産などを売却し、2000年に更生手続きを終えていました。朝日新聞北海道支社の近くにミツウマの店があり、馬が3頭並んだ懐かしいロゴマークの看板を目にして取材を思い立ち、アポイントを取りました。

—かつてのモノづくりの熱気はありましたか?

畑中:2009年に中国の工場に生産を委託し、いま小樽ではゴム長靴は作っていないんです。その代わりに技術を生かした他の商品を作っていました。社長に「今、この会社はどういう形で頑張っているんですか?」と聞いたら、精密機械メーカーや製薬会社で使われている「静電靴」や、ワークマンとタイアップした「安全靴」、「滑り止めゴムマット」などを作っているそうです。ゴム加工の技術を生かし、多角的に展開していました。

 最盛期に約2500人いた社員は、今107人。経営が楽ではないことは見て取れましたが、社長は「用途が多様なゴム製品はなくならない」と話し、磯焼け対策で開発したゴム製品では特許も取得していました。どれだけ経営のプラスになるかは分からないが、大化けする可能性はある。そうやって可能性のある試みを臆せず続けているところに、技術やブランド名を残そうという、ものづくりに携わる人々の執念を見ましたね。

—ところで、北海道が子どものころと変わったなあと思うことはありますか?

畑中:夏の暑さが「あり得ない」レベルですね。子どものころにはエアコンがある家なんてなかった。夏休みにプールに入ると水温が低くて唇が紫色になったりしたものです。あと雪の量が増えましたね。雪ってあまり寒すぎると降らないんですよ。中途半端だと降る。札幌でも交通が麻痺するほど、一気にドカンドカンと降ることが増えたと感じています。

—4月から函館支局に異動されるとか。どんなことを取材したいですか?

畑中:母方のルーツがある土地で、なじみがあります。せっかく海がある町に行くので、漁業のことは取材したいですね。先ほども温暖化の話が出ましたが、水温が上昇し、函館でもブリやフグ、アジが釣れるようになったと聞いて驚いています。40年前、アジなんて北海道では捕れなかった。私は就職して東京で初めて食べたのに!

畑中謙一郎 記者
余市町出身。恵庭市育ち。1992年朝日新聞社入社。長崎支局(現総局)、筑豊支局、西部本社経済部を経て、2000年から東京本社スポーツ部、大阪本社スポーツ部(広島駐在)などで主に野球とゴルフを担当。2021年、東京スポーツ部札幌駐在。2024年12月から北海道報道センター記者。選挙なども担当。
2025年10月6日付 北海道支社版紙面(部分)
2025年10月6日付 北海道支社版紙面(部分)
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