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新聞記者に聞いてみた vol.33

社会の弱者に寄り添う記事を

公開:2025年12月16日
新聞記者に聞いてみた
公開:2025年12月16日
大瀧記者の担当した連載「共生のまち 生野」(2024年6月8日 大阪朝刊)
大瀧記者の担当した連載「共生のまち 生野」(2024年6月8日 大阪朝刊)

今回は、札幌出身、広島、三重、大阪で多様な現場を歩き、今年9月に札幌へ戻って来た記者さんです。災害、人権問題、原発、在日コリアン――社会の中で見落とされがちな人たちに寄り添い続けてきた若手です。

−― 生まれ故郷に戻ってきた訳ですね。

大瀧:12年ぶりくらいです。大学も北海道でその後本州へ出ましたので。

−― 元々英語の先生志望だったとか。

大瀧:教育大で英語教師を目指していたんですが、途中で方向が変わりました。大学時代に1年間休学して、「ピースボート」という地球一周の船旅に参加したのがきっかけです。ピースボートは宣伝のポスターを貼ると参加費が安くなる仕組みがあり、半年間ですすきのを中心にポスター7千枚を貼って参加費を無料にしました。

−― 7千枚とはすごいですね! 船の中で何があったのですか?

大瀧:ピースボートには「水先案内人」というゲスト講師がいて、その中の1人が元朝日新聞記者の伊藤千尋さんだったんです。ベルリンの壁崩壊を西ドイツ側から取材した話に衝撃を受けました。「歴史の転換点に立ち会える仕事ってすごい」と思って、船内ではとにかく話を聞きまくり、船を降りた瞬間から朝日新聞を受けるための準備を始めました。その時に初めて新聞をしっかり読みました(笑)。

−― 伊藤さんは海外特派員の経験が長く、平和や市民活動なども広く取材された方ですね。そのような分野の取材に興味があるのですか。

大瀧:人権とか平和とかの問題をずっとやりたいと思っていたのですが、初任地の広島では着任して2カ月で西日本豪雨が起き、その取材に明け暮れました。記者として本当に鍛えられました。そんな中で、初めて裁判の取材をしたんです。傍聴席に座って、ぼーっと聞いていたんですが、それが朝鮮学校の高校授業料無償化に関する訴訟でした。そのとき、私と同じ歳の朝鮮学校の先生が意見陳述で朝鮮学校の歴史とかについて証言台で話すんです。必死にメモを取るだけだったんですが、本当に自分は何も知らなかったということを痛感しました。札幌の実家の近くに北海道唯一の朝鮮学校があり、子どものころは一緒にサッカーしたこともあったのですが、あの子どもたちがこんな歴史を歩いてきたのだなということに初めて思いを馳せました。すぐに証言していた先生に話を聞きに行き、他にもいろいろな話を聞きました。

−― 在日朝鮮人のことに関してはずいぶんいろいろと記事を書いていますが、きっかけはそこだったのですね。

大瀧:そうです。差別とか人権問題を取材したくて記者をやってるのに、知らなかったことを恥ずかしいと思い、そこから勉強したりいろいろな人に話を聞きにいき、少しずつ朝鮮学校の記事を出すようになりました。

−― 大阪では在日朝鮮人の多い地区に住みながら取材したとか。

大瀧:はい、生野区というところに3年半住んでいました。あそこは人口が約12万人いて、そのうちの2割が外国籍の人たちで、そのほとんどが在日の人たちです。3年半のうち半年間は、コリアタウンと言われる地域のど真ん中の長屋に1つ部屋を借りて暮らしていました。

−― なかなかそこまでする記者さんも珍しいと思うのですが、なぜそうしようと思ったのですか。

大瀧:100年前からその地域に住んでいる人たちで、そこに住んで同じ空気を味わって、同じものを食べて、衣食を共にしながら取材してみようと思ったんですね。新聞記者が切り取る記事って基本的に非日常だと思うんです。毎回何か事が起きたら取材して記事を書いてとか。もちろんそれも大事なんですけど、そのような視点ではなく、定点観測を大事にして日常を伝えたいと思いました。この場所を知らない人たちに向けて私たちは記事を書いているので、「こういう場所なんだ」ということを知らせることで伝わることがあると思ったんです。

-― 北海道では道庁を担当していますね。今後はどのような分野を取材する予定ですか。

大瀧:直近はやはり泊原発の再稼働です。知事が「当面取りうる現実的な選択」と述べ、再稼働を容認しました。今後の動きに注目しつつ、原発をめぐる“地域の分断” にも注目しています。三重県で原発を拒んだ町を取材した経験があるので、賛否だけでは語れない生活への影響も取材したいと思います。

-― 北海道コンサドーレ札幌もお好きなようですね。

大瀧:小学2年生からサポーターです。関西にいたときもアウェーのゲームでコンサが来るときはよく見に行っていました。趣味みたいなもんですが、たまに記事も書きますので、見つけてください。

-― ありがとうございました。期待しています!

大瀧哲彰 記者
1995年札幌生まれ。2018年朝日新聞社入社。広島総局1年、三重県津総局3年、大阪社会部3年半の勤務を経て、9月から北海道報道センター勤務。北海道庁も担当している。
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