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新聞記者に聞いてみた vol.39

医学部卒から記者に。事件現場を駆け回る

公開:2026年6月16日
新聞記者に聞いてみた
2025年12月29日付紙面より
2025年12月29日付紙面より

 今回の記者さんは昨年4月にデジタル企画報道部から北海道報道センターに異動し、現在、北海道警担当キャップをしている朽木誠一郎記者です。医学部卒で朝日新聞に中途入社。在籍中、最新科学を武器に40kgの減量に成功した秘訣を『医療記者のダイエット』(KADOKAWA)として出版。北海道では畑が違う「事件記者」となり、現場取材に手応えを感じているといいます。

—医学部を卒業後、編集プロダクションやウェブメディアを経て朝日新聞へ。どうして新聞記者になろうと思ったのですか?

朽木:医療コミュニケーションの実践のためにメディア業界を志し、前職のBuzzFeedでは医療の担当でした。朝日新聞ではこれまでデジタル部門で記者・編集者として働いてきました。書く時は医療記者を名乗り、主に医療分野の記事を書いてきました。一方で、事件や選挙、災害対応の経験がなく、「このままではいざというときに必要な情報を届けられない」と考え、新聞本体への異動を希望しました。

—編集者の経歴が長いですが、記者との違いは感じますか?

朽木:新聞記者になると「自分が書きたいことを書く」ことがよしとされる場面もあります。それには初め、びっくりしました。今までだと、例えば「インターネットで読まれるのはダイエット記事だな」と考えて企画を立て、連載し、人気になれば書籍化する、という順序。読者のニーズを前提にせず、記事を書く発想がなかった。それはある意味で、編集者目線と言えるかもしれません。記者になるにあたり、当時の上司から「地を這い、泥をすするような体験をしてきてください」「新聞記者の魂を学んできてほしい」と送り出されました。今では「自分は何を伝えたいか」「読者は何が知りたいか」の両方の目線を持ちながら書くことが大事と思っています。

—北海道報道センターでは何の担当を?

朽木:秋までは高校野球を担当しました。その後は事件、事故を担当、今年4月からは北海道警キャップを務めています。

—転機になったのが、小樽市のスキー場で起きた事故だそうですね。

朽木:昨年12月末、小樽市の朝里川温泉スキー場で、当時5歳の男の子が屋外のエスカレーターに巻き込まれて死亡しました。発生の報を聞き、真っ先に現場に行く「一番機」として駆けつけました。現場は基本的に一人だけ。早朝のスキー場は鼻水も凍る氷点下です。大きな現場は初めてでしたが、雪山をかけずり回りながら、キャップ、デスクとやりとりをし、東京社会部の求めにも応じながら、必要とされる原稿を書くことができました。物理的に大変な仕事でしたが、何とかできたのは、自分の子どもと同じくらいの年頃の子どもが亡くなってしまった事故、という面も大きかったように思います。何があったかを追及して、社会にきちんと知らせないといけないと強く思いました。この取材で「新聞記者として一通りのことができるようになった」と認められ、自信もつきました。

—スキー場が設置した第三者委員会が調査報告書をまとめています。

朽木:4月にキャップになった後も、新しい動きを追っており、会見があると聞いて参加し、記事を書きました。新聞本体ではその時々の持ち場や、すぐに向かえる人が取材を担当することが多いように感じますが、この件は一つの区切りまで一貫して関わることができ、手応えがありました。長大な報告書をかみ砕いて、読者にわかりやすいように記事に落とし込めたと思います。

—事件取材では被害者や遺族から取材を断られたり、関係者から嫌がられたりすることもあるのでは?

朽木:そうですね。改めて不思議な仕事だなあと思いますが、自分は職業記者として必要と思うことをしっかりとやっていきたい。事件記者はまだ半年ですが、本来なら知り得ない情報や、ニュースの裏側にアクセスできることが魅力の一つだと思います。

—北海道でこれから取り組みたい仕事は?

朽木:今年2月、北方領土の元島民への連続インタビューのうち一本を担当し、道内版に掲載されました。国後島出身の男性で、敗戦時にソ連が侵攻してくるという噂があり、小舟で島を後にし、大海に投げ出されて一度にきょうだい5人を亡くしたという、壮絶な経験を語ってくれました。北方墓参などがロシアのウクライナ侵攻により中断されており、きょうだいの墓参りも果たせていない、と。取材時に92歳で、記事が掲載されたすぐ後に亡くなられました。こうした戦争体験は、誰かが聞いて伝えないと、なかったことになるのだと思い知りました。継続的に取材したいです。

—その先は?

朽木:最終的には医療報道に携わりたいですが、医療記者が医療だけを書くという仕事ではないことも、今ではよく分かりました。経験を積み重ね取材先の信頼を得て、もっと深いところまで書けるようになりたい。情報公開など調査報道の手法も学び、記者としてできることを増やしていきたいです。

朽木誠一郎記者
1986年茨城県出身。群馬大学医学部卒業後、編集プロダクション「ノオト」、BuzzFeedJapanなどに勤務。2019年、朝日新聞社に入社。withnews編集部、デジタル機動報道部などを経て、2025年4月から北海道報道センター。主に事件、司法を担当。
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