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北の記者席から vol.50
北の記者席から

VOL.50悪だくみは許さない 麻薬探知犬デビュー

今月の執筆者|朝日新聞北海道報道センター 記者 松本英仁
公開:2026年4月20日
麻薬探知犬のメイプル号とハンドラーの沢口李央さん
麻薬探知犬のメイプル号とハンドラーの沢口李央さん

 千歳市の新千歳空港内にある函館税関千歳支署を拠点に活動する麻薬探知犬として、新たに「メイプル号」(ラブラドールレトリバー、メス、2歳4カ月)がデビューした。旅行者のかばんや荷物の中から違法薬物のにおいをかぎわけ、怪しい人物や荷物の脇に「お座り」して、ハンドラーと呼ばれる税関職員沢口李央さん(23)に知らせる様子を初めて取材した。

 探知犬の発祥は欧米とされ、沢口さんからの指示は「シット(座れ)」「ファインド イット(捜せ)」などと英語が主体だ。「日本で世話になっているのに、日本語が通じないのかよ」と突っ込みたくなったが、違法薬物のにおいがするタオルをしのばせたスーツケースの前で止まり、きちんと知らせる見事な「仕事ぶり」。沢口さんは頭やあごをなでながら「グッドボーイ!(いい子だね!)」とほめ、見守る幹部らからは大きな拍手。しっぽをブンブン振って応えるメイプル号の得意げな表情に、思わずほおが緩んだ。

 沢口さんいわく「メイプルにとって、探知はゲームや遊びのような感覚。だから正解した時は思い切りほめてあげる」。成功体験が自信になり、向上心に火が付くのは人間と同じらしい。やや大げさとも感じた大きな拍手の意図がわかった。

 ヒトの数千倍から1億倍に達する鋭い嗅覚(きゅうかく)を生かした警察犬や災害救助犬のほか、病院や施設で患者や入所者の心を癒やすセラピードッグとして活躍する現場に何度も出くわした。メイプル号を取材したのも、以前から気になっていた質問をしてみたかったからだ。

 「薬物のにおいで犬が健康を害さないか」

 答えは「薬物の成分を体内に取り込むわけではないので、健康上の心配はない」。

 メイプル号は「1日7時間45分の勤務が原則で週休2日」。約7年働くという。休みの日は存分に遊んでもらえるそうだ。特殊能力で活躍するイヌの世界でも働き方改革が進んでいることを知った。

 記者の自宅にも今夏16歳になるシバイヌがいる。ここ半年近くは肝臓や腎臓を病んで、大好きな散歩ができなくなり、ほぼ寝たきりになった。規則正しい食生活で間食はほとんどないが、ストレスや疲労、時には家族のいさかいの種を知らず知らずのうちに拾って食べてくれているように思う。

 年老いても大事な家族である愛犬と、危険な業務に励むメイプル号を重ね合わせ、違法薬物を国内に持ち込もうとする悪だくみは絶対に許さない、と記者も強い気持ちを新たにしている。

執筆者 松本英仁
北海道報道センター記者
苫小牧地区担当
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