朝日IDをお持ちの方はこちらから
AFCのログインIDをお持ちの方(2024年7月31日までにAFCに入会された方)はこちらから
新規入会はこちらから


冬がやって来た。北海道で長年暮らすみなさんには笑われてしまうが、「また今年も根雪かあ」と思うと気が重い。なにが嫌かと言えば、ツルツル路面に尽きる。宮沢賢治の童話・雪渡りはこんな書き出しで始まる。「雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり」―。どんなに気をつけても、滑って転んで、あちこち痛打する。運が悪ければ、骨折する人もいる。
2年半前、札幌へ赴任して以来、「温暖化のせいか気温の変動が大きくなり、真冬にも雪が解けて再凍結することが増えた気がする」と、複数の方からうかがった。ザクザク路面も砂地のようで歩きにくいが、私にとってはツルツルほど難敵ではない。もちろん、休日に出かけるスキーは楽しいし、列車の車窓からながめる雪景色は美しい。
「排雪」という言葉も寒冷地の厳しさを感じる。札幌市では過去10年で除排雪の費用(決算ベース)が200億円超となったのは8回あって、300億円を超えた年もある。今シーズンも「過去最大の予算278億円を見込む」という報道があった。気象条件で増減はあるが、約8割が道路除排雪費で、残りの約2割がロードヒーティングの燃料や、機械メンテナンス費だという。札幌市の年間予算に占める雪対策費はわずか1%ぐらいだが、個人の家計と比べるとなんと巨額か。単純に比較はできないが、札幌ドームの総事業費は開業当時で537億円。除排雪費をあてれば、2年ごとにドームを新設している計算だ。
北国では、光の春、音の春、気温の春、という順で、春がやって来るそうだ。日照時間が伸び、雪解けの水音が聞こえ、春になれば溶けてなくなる雪に、こんなお金や手間をかけなければならないのは、悩ましい。冬場に仕事が減ってしまう土木や建設業の雇用対策の側面もあるだろうが、深夜、多くの人が寝静まってから、凍て付く外で作業車両の誘導や交通整理にあたる作業員たちの仕事ぶりには感謝してもしきれない。しかし除排雪の作業で重機やダンプカーが動けば二酸化炭素(CO₂)も排出される。
米大統領選はトランプ氏が制したが、SDGs(持続可能な開発目標)の達成は避けては通れない。除雪を体験型の観光アトラクションにしたり、雪を貯めてデータセンターの冷房に使ったりできないか、なんて想像したが、実際に美唄市の会社では、夏には貯蔵した雪でサーバーの熱を冷まし、冬には熱を
取り出してウナギの養殖に挑戦しているそうだ。こんなことを書いておきながら、今シーズンも雪がドッサリ積もった朝には「もっとしっかり除雪して欲しい」と思ってしまうのだろう。きっと。
朝日新聞北海道報道センター 松田 昌也