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木彫り熊が熱い。雑誌「カーサ ブルータス」1月号で、再発見されたフォークアートとして特集されたり、東京のデパートなどでは展示販売会が開かれたりしている。
鮭を背負った木彫り熊といえば、昭和30、40年代の北海道観光ブームに乗り土産物として人気を博し、全国の家庭に置かれた。だが、土産物は食品や実用的な工芸品などに多様化し、木彫り熊の人気はすたれ、「いやげ物」になってしまっていた。
実は我が家で受け継いだ熊がある。昨年、義父の遺品の中から見つかった。「とてもかわいいので調べてみたら、貴重な熊のようよ」と妻。「志」の銘などから、入手困難で「幻の熊」と言われる八雲町の柴崎重行(1905~91年)の作のようだった。チョコレートのような濃い茶色の木材、はつったような面。作者が感じ取った熊のキャラクターの粋を表した抽象的な作風は大変ユニークだ。
この熊との出会いから、木彫り熊への興味が高じ、今年4月、とうとう夫婦で八雲町木彫り熊資料館を訪れるまでになった。旧尾張藩士が入植した町では大正後期、19代当主の徳川義親が旅先のスイスで求めた土産物の木彫り熊を伝え、制作を奨励した。資料館には当時から現代に至る熊たちが展示され、中でも柴崎の熊は目玉となっている。
私たちは持参した熊を学芸員の方に見てもらった。以前札幌市にあった民芸品店「青盤舎」の箱入りの熊を見て、「本物に間違いない」。柴崎は70年代中頃まで青盤舎に作品を納めていて、そのころまで彫り入れていた目玉があることから、それ以前の作であるという。木材は北海道で「オンコ」と呼ばれるイチイだった。
ここには書ききれないが、北海道には藤戸竹喜(1934~2018)をはじめとするアイヌ民族の熊彫りの系譜もあり、大変奥深い世界が広がっている。ますます木彫り熊に夢中になっている。
朝日新聞北海道報道センター デスク 野田一郎