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知床連山は、うっすらと雪化粧をしていた。10月21日、斜里町ウトロを訪ねた時のことだ。
4月23日、ウトロ漁港を出た観光船「KAZUI(カズワン)」は知床沖に沈んだ。船には26人が乗っていた。事故翌日から現地デスクとしてウトロに入り、1カ月ほど過ごした。
その後も折りに触れて、ウトロを訪ねている。やまないカモメの鳴き声、見上げるほど巨大なオロンコ岩、高台に上がる急な坂道、そして、海岸線に沈む真っ赤な夕日。いまでは、札幌にいても鮮明にウトロの景色を思い浮かべることができる。
記者ではない私が、ウトロに通い続けるのにはいくつか理由がある。そのひとつが、時を刻み続けるこの町や人々の様子を、つぶさに見ていく必要があると考えたからだ。
間違いなく、事故による最大の被害者は乗客、そのご家族、仲間の方々だ。一方で、ウトロの人たちが長年築き上げてきた観光地としてのブランド、信頼も、事故によって大きく崩れていった。
ウトロという町全体も、事故の大きな被害者ではないか。ずっとそう感じてきた。しかも被害の傷痕は、見える形となって現れることはない。それでいて、観光を生業としてきた地元を確実に追いつめる。
「観光地としての信頼を取り戻すのにどれだけかかるのか」。地元の方々は口をそろえて言う。いまだ行方不明者の方がいるなか、それは茨の道だろう。
それでも話を聞かせてくれた多くの方々は前を向き、それぞれがやるべきことを模索しているように映った。ご家族への対応を担ってきた町役場の方々も同じだ。
事実関係、事故原因の解明につながる報道は重要だと考えている。ただ、それだけではない。道内に根を下ろすメディアとして、この町がどのような道を歩んでいくのかをしっかりと報じていきたい。
朝日新聞 北海道支社 デスク 岡戸 佑樹