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9月下旬、札幌市内2カ所目となる「札幌市東部児童相談所」(白石区)が開設された。
「え~ん、え~ん」。開設前の内覧会で、担当者から説明を受けている壁越しに、小さい女の子の泣き声が聞こえてきた。内覧会の時には、緊急時に子どもを受け入れる一時保護所(定員36人)の運用がすでに始まっており、女の子は保護されてきた子どものようだった。
私にも3歳の男の子がいる。子育ては思うようにならないことの連続だ。時には、手を上げたくなる。ぐっと我慢をしていると、つい大きな声が出る。窓を開放していたためだと思われるが、子どもの激しい泣き声に加えて私の大きな声の叱責を虐待だと心配した近所の人によって今夏、通報された。相談室の担当者が自宅を訪ねてきた。担当者は私たち親子をみて疑いはないと判断したようだが、「夏は通報が多いんです。お母さんの気持ちは分かりますが、強い叱責は子どもの成長にもよくありませんから」と諭された。
取材中の女の子の泣き声は、このショッキングな一件を思い起こさせた。私は、ともすれば虐待をしてしまうかもしれない。そういう薄氷のなかで子育てをしている気がする。そして、誰しもが状況次第で実際に行ってしまう危険があるとも思う。虐待は人ごとではない。

社会の関心の高まりもあって通報件数は飛躍的に増加したが、悲惨な事件はなくならない。市内でも2019年、池田詩梨(ことり)ちゃん(当時2)が母親と交際相手から継続的に虐待を受けて衰弱死する事件が起きた。事件をめぐっては児相と警察など関係機関との連携不足が指摘された。今回の児相開設は再発防止策でもある。
取材後、担当者に通報の一件を打ち明けたところ、担当者自身も自分の子どもを厳しく叱った経験があるとのことだった。児相の職員が通報された話を聞いたことがあるとも。「(通報について)虐待かどうかの見極めは非常に難しいが、子どもの命を守るという視点を常に意識しながら取り組んでいくしかない」。ひとつ判断を間違えれば、子どもの命を危険にさらせてしまうかもしれない。そうした緊張感のなかで働く現場の厳しさを垣間見た気がする。
