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カフェでのんびりと原稿を書いていると、社用のスマホが鳴った。
「下校中の小学生の列にトラックが突っ込んだ」
飲みかけのフラペチーノはあきらめて現場に急行した。児童5人が死傷。原因は飲酒運転だった。
入社直後の2021年6月に千葉で取材した事故だ。亡くなった児童が好きだったというコーラを現場に供え、昨年5月に札幌へ異動してきた。そして、道内でも飲酒運転による悲惨な事故が相次いでいることを知る。
高石洋子さんと出会ったのは、赴任して間もない頃だ。
高石さんは03年、当時16歳だった息子の拓那さんを飲酒ひき逃げ事故で亡くした。しかし、逃走した運転手の飲酒量を立証するのは困難で、懲役2年10カ月の判決に「逃げ得だ」と感じた。以来、飲酒運転の根絶や厳罰化を求めて活動を続けてきた。
昨年7月、高石さんは道などが主催する「飲酒運転根絶の日」決起大会で経験を語った。
「決起大会を開くだけでなく、本気で行動しましょう」
大きなホールに響いた高石さんの声には、どこかむなしさも混ざっていた。
どうすれば飲酒運転はなくなるのだろう。私も警察の取り締まりやアルコール依存症、運転代行業者などを取材してきた。だが、正直なところ糸口はつかめないでいる。
高石さんの自宅へ取材に行った夜、厚意にあまえて拓那さんの父親と3人で食卓を囲んだ。部屋の隅には笑顔の遺影もある。
高石家のカレーライスは、私にはすこし辛かった。だけど、温かい空間がうれしくて、つい2回もおかわりをした。話を聴いて、理解して、他の人に伝える。新聞記者として、自分にできることを重ねるほかないと思った。
今年2月12日、高石さんの経験について書いた記事を朝刊に載せた。朝日新聞デジタルでの配信時間は午前6時。その日、その時間にこだわったのには理由がある。
執筆者:朝日新聞 北海道報道センター記者 上保晃平