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記者として18回の転居を経験し、そのたびに地域の美術館や博物館、郷土資料館を訪れることが習慣になった。地元の人には「小中学校の社会見学以来行ったことがない」と言われることも多いが、よそ者の私にとっては、勤務先や担当地域の歴史や文化を立体的に知ることができる貴重な場であり、取材のヒントにもなる。
地域にミュージアムがある意義は何か――この問いを考える連続講座「地域にとって美術館はどういう存在か」が昨秋に小樽芸術村で開かれ、私は5回中3回に参加した。講座では、美術館・博物館は文化財や美術品を保管・公開する場であると同時に、地域性に根ざしたコレクションや催事を通じて住民の誇りや愛郷心を育む役割を持つと語られた。
講師には、東京のアーティゾン美術館から千葉県立美術館長となった貝塚健氏、金沢21世紀美術館の企画に関わる黒沢伸氏ら、日本を代表する専門家が並んだ。貝塚氏は京橋界隈を歩き、歴史を感じる町歩きイベントを開催。黒沢氏は市内の全小中学生に美術館を体験させる企画を立案した。名品の有無以上に、施設と地域のつながりが重要だと実感した。

私の担当する後志地方にも魅力的なミュージアムがいくつもある。たとえば、岩内町の木田金次郎美術館は、郷里を描き続けた画家の力強い作品を収蔵し、故郷への愛を感じさせる。余市町のよいち水産博物館は、縄文遺跡からニシン漁、リンゴ栽培、ウイスキーと余市の歴史を網羅。入り口の漁船や北前船は海と共に生きた町の誇りを象徴する。
ニシン番屋や洋館を当時のまま修復、保存し、歴史的建造物を見せるタイプの施設も多くて魅力的だ。
観光名所として多くの来館者を集める施設もあるが、来場者が年間1万人未満というところも少なくない。週末や冬季は閉館、予約制、隣接施設の職員による解錠が必要な場合もある。
収蔵スペース不足や建物の老朽化による資料劣化、自治体合併後の管理不全など課題も多い。閉館に追い込まれる施設もある。郷土史や自然観察の愛好家、アマチュア画家らに活動や発表の場を提供し、維持管理や企画で協働する仕組みが必要ではないか。
地方のミュージアムは訪れた人に地域の魅力を発信し、住み続けたいと思わせる場所であってほしい。郷土資料館、美術館、博物館、文学館――札幌市内や近郊でもまだ行っていないところはある。次の週末はどこへ行こうか。