2009年(監督:北川悦吏子)
ロケ地:小樽、石狩

中学生・高校生のときめく恋心や切ない青春を描く、いわゆる“キラキラ映画”にいまいち乗れないのは、私自身それほどキラキラした覚えがないからかもしれない。当時16歳の、とびきりキュートな北乃きいが主演し、恋愛ドラマの名手として知られる脚本家・北川悦吏子が初メガホンを取った「ハルフウェイ」も、そんな理由から身構えて観た作品。けれどすぐに肩の力が抜け、甘酸っぱいサイダーを一気飲みしたような気分でラストシーンまで見届けた。くせ毛とニキビに悩んだ高校時代の自分を、登場人物と重ね合わせることはやっぱりできなかったけれど。
主人公のヒロ(北乃きい)は小樽に住む高校3年生。同学年でバスケットボール部のエース・シュウ(岡田将生)に熱烈片思い中だ。ある日、バスケ試合の応援に白熱し過ぎてふらついた彼女は保健室へ。ベッドで目を閉じながら親友・メメ(仲里依紗)に想いを語ると、室内にはケガしたシュウも居合わせていた。そうと知らない彼女は、告白しようと放課後シュウを待ち伏せ。すると彼の口から、「付き合ってほしい」という思いもよらない言葉が飛び出した!…と聞くと、シュウが打算的に逆告白したように思えるが、実際は逆。それが分かるにつれ、進路と恋に揺れる若者たちが愛おしくなってくる。
川沿いの砂利道や、見晴らしの良い坂道。ありふれた北海道の街並みが、自転車で駆け抜ける高校生たちの通学路となると、青春のステージに早変わり。美しく色づく秋の景色が、叙情をさらに駆り立てる。とはいえ恋する2人の目には、街も季節も映らないのだろう。ある事実を知ったヒロが激怒し、シュウと初めて喧嘩する場所は、いつもの河原の土手。背後には、のどかな川面と芝生が広がっていた。
ちなみに、この時の喧嘩でヒロが吐く啖呵に私はしびれたのだが、実はセリフのほとんどは出演者のアドリブだったと知ってびっくり。劇中で、ある英単語をヒロが読み違え、笑いを誘った「ハルフウェイ」も、北乃本人の勘違いから生まれた“この世にない言葉”だと、北乃自身がテレビ番組で明かしていた。この不思議な言葉はタイトルになったけれど、原題は「だけど、それはまだ物語の途中…」。確かに、長い目でみれば、学生時代は「物語の途中」。というか、まだ始まったばかりといえる。でもそれは、経験したから言えること。当人たちにしてみれば、恋も進路も真剣勝負。人生の一大事にぶつかった2人をそっと見守る教員役を、大沢たかお、成宮寛貴が軽やかに演じていて嬉しい。
実際、道ですれ違う学生さんたちは、表情こそさまざまだが、誰もが新しい可能性に輝いている。そうか。かつての私も、大人からはキラキラして見えたのかもしれない。もうすぐ出会いと別れの春を迎える彼らに、心からのエールを。原題の話に戻れば、「物語の途中」なのは私たちも同じ。今この瞬間も、かけがえのない1ページを紡いでいる。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。189号(2020年5月号)の「挽歌」のあとがきで、原作者・原田康子さんのほかの映画化作品はDVDがないと書きましたが、「満月 MR.MOONLIGHT」(1991年、大森一樹監督)はDVD化され、ネットで有料配信されていました! 訂正し、お詫びいたします。いつかこのコーナーでご紹介したいです。
