1978(監督:岡本喜八)
ロケ地:安平(東追分)

恐れ多くて近付けない。けれど、一度はお会いしてみたい憧れの脚本家、倉本聰さん。
リアルタイムで見始めたのは、2005年のテレビドラマ「優しい時間」から。20代の私は毎回ラストで感涙。撮影のために建てられた富良野の喫茶店にも足を運んだ。その後も「風のガーデン」「やすらぎの郷」「やすらぎの刻~道」といった連続ドラマを楽しみ、代表作「北の国から」シリーズはレンタルで一気見。最近は、1970年代に放送された東芝日曜劇場時代のHBCドラマをインターネットの動画配信で鑑賞し、半世紀近く経っても全く色褪せない物語、セリフの数々にしびれている。
そんな倉本さんが脚本を担当した映画「ブルークリスマス」を初めて観たのは、10年前のこと。北海道ロケの〝駅映画〟について調べていたところ、映画好きの先達から「北海道らしい駅とは一線を画した描き方の異色作」としてお薦めされたのがきっかけだった。
邦画界の鬼才・岡本喜八監督とのタッグと知り、期待して観たはずなのだが……正直言えば、第一印象はそれほど記憶にない。確かに、国鉄時代の無人駅舎という東追分駅は、主人公(勝野洋)が恋人(竹下景子)から秘密を打ち明けられる場所として登場する。不安を抱えた男女の静けさが、激しい列車の通過音と対比され、異様な緊張感が流れていた。
ところが、最近見直してギョッとした。未知の現象に対する差別と偏見。プロパガンダを駆使した権力者の横暴。コロナのパンデミックや独裁者による戦争に苦しむ令和の時代を、まさに予見しているようではないか!
物語は、国防庁特殊部隊に所属する置(勝野)と、国営放送の記者・南(仲代達矢)を中心に展開する。行きつけの床屋店員(竹下)に思いを寄せる置。一方、知人記者(岡田裕介)の恋人である新人女優・高松夕子(新井春美、現・新井晴み)がドラマのヒロインに抜擢され、喜ぶ南。忙しくも平和だった2人の日常は、「青い血の人間がいる」という驚愕の事態によって狂わされていく。
「青い血」という噂が広まった高松はドラマを降板し、自殺。真相を探った南は、パリ支局に飛ばされてしまう。一方、組織の命令で「青い血」抹殺に加担する置だが、愛する女性(竹下)も信頼する同僚(沖雅也)も「青い血」だと判明し、苦しい立場に追い込まれる。世界中に恐怖と不信が蔓延する中、クリスマスイブの夜、恐ろしい計画が実行されるのだった。
「特撮を一切使わないSF映画」を目指したという本作だが、前年にあの「スター・ウォーズ」シリーズ第1作目(エピソード4/新たなる希望)が公開。世の中がSFブームに沸く中、本作の大いなる挑戦は当時あまり受けなかったようだ。とはいえ、単なる反骨心だけでこの異色SF大作を生み出したわけではないことは明らか。作品が放つ〝警戒音〟は、今を生きる私の胸に強く鳴り響いている。
倉本さんにしてみれば、遅すぎるかもしれない。それでも私は、青い血と赤い血が雪の上で悲しく混じり合ったラストシーンを忘れない。

文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。倉本さんが脚本兼初監督を務めた釧路ロケ「時計 Adieu I'Hiver」(1986)をいつか観てみたい! ちなみに、倉本さん脚本&岩見沢ロケのHBCドラマ「ばんえい」(1973)に亡き祖父がエキストラ出演したことが、我が家の秘かな自慢です(笑)