1958年(監督:小林恒夫)
ロケ地:

ミステリーに疎い私でも、タイトルだけは知っていた「点と線」。原作は、作家・松本清張が初めて手掛けた長編推理小説で、雑誌の連載が終了したその年のうちに映画化して話題を集めたのが本作だ。私は7年前、スタッフとして参加するNPO法人「北の映像ミュージアム」の上映会で初めて観た。原作小説を読んだのは、恥ずかしながら最近のことである。
物語は、九州・博多の海岸で男女の遺体が発見されたことから始まる。地元警察は心中と断定するものの、ベテラン刑事・鳥飼(加藤嘉)だけは違和感を持つ。一方、死んだ男が国の汚職事件のキーマンだったことから、警視庁の三原刑事(南廣)もこの情死に疑惑を抱いた。2人は事件現場や目撃者の証言を洗い出し、新たな容疑者として安田(山形勲)を浮かび上がらせる。ところが彼には、事件当日、北海道に出張していたという完全なアリバイがあった!
トラベル・ミステリーの名作と言われるだけあって、東京駅の “4分間の時刻表トリック”をはじめ、日本の南北にわたる鉄道シーンが満載。特に、三原刑事が安田の足取りを検証しようと北海道へ向かうシーンは見逃せない。青森から青函連絡船で函館に渡り、急行列車で札幌へ。手書きの旅客名簿やレトロな客車など、昭和30年代の交通事情が次々と活写される。と同時に、今よりずっと長旅だった当時の東京‐札幌間の距離感も伝わってくる。
札幌の場面では、札幌市時計台のそばに佇む木造2階建ての「丸惣旅館」が映る。これは1885(明治18)年に創業し、1984(昭和59)年まで100年近く続いた名物宿で、懐かしむ方も多いはず。その反面、三原刑事が道内を訪ね歩くシーンはピンとこないかもしれない。実は、本当に北海道で撮影されたのは実景のみで、ほかはセットだとか。とはいえ、映像をつないで物語をふくらませるのは、映画のテクニック。冒頭に触れた上映会では、「今の札幌の光景もなんだか映画の続きのようです」という感想が寄せられたのだが、映画の魔法にかかるとロケ地で観る面白さは倍増するもの。今や失われた昭和の風景に加え、映画の美術スタッフがどう北海道を再現したのかも楽しみたい。
原作は2人の刑事視点でほぼ進むのに対し、映画では、病身である安田の妻・亮子(高峰三枝子)の存在がクローズアップされる。事件の裏に隠された彼女の真の目的とは…。非情でありながら、燃えるような愛を秘める高峰三枝子の美しいこと!その着物姿が艶めくほど、女の孤独と絶望が浮かび、悲哀さえにじむ。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ)
ライター、ZINE「映画と握手」発行人。名画座的ラインナップが魅力だった上映企画「午前10時の映画祭」(北海道会場:札幌シネマフロンティア)は今年ファイナル。「砂の器」「ベニスに死す」「大脱走」…ひとつでも多く鑑賞したい!