2004年(監督:鈴井貴之)
ロケ地:斜里町、清里町、美幌町

週に2、3回はコンビニに行く。仕事の資料を印刷したり、支払いを済ませたり。最近は、店限定のスナックが欲しくて数店舗を探し歩いたこともあった。身近で便利、今や暮らしに欠かせないコンビニエンスストアを舞台にした映画「銀のエンゼル」は、オーナー親子を中心にした群像劇だ。
主人公は、北海道の田舎町、国道沿いにポツンと佇むコンビニ店を経営する北島昇一(小日向文世)。妻の佐和子(浅田美代子)に店を任せっきりの昇一だったが、佐和子が交通事故で入院してしまったから、さぁ大変。久しぶりの夜勤に就くと、携帯電話で話し続ける常連客がいたり、駐車場が若者たちのダンスの練習場になっていたりと戸惑いの連続だ。加えて、東京進学を目指す高校生の娘・由希(佐藤めぐみ)と進路を巡って関係が悪化。とうとうある朝、娘から「今から家出します」と宣言されてしまう…。
監督の鈴井貴之氏は、HTBの伝説的深夜バラエティー「水曜どうでしょう」の企画・構成も手掛ける人気クリエイター。本作は、札幌・岩見沢を舞台にした異色ファンタジー「man-hole」(2001年)、TEAM NACS総出演のサスペンス「river」(2003年)に続く北海道ロケ第3弾。映画初主演となる三笠出身の小日向文世が、ふがいなくも愛すべき父親を演じる。
前2作とは違うハートフルドラマとあって、安田顕や戸次重幸らお馴染みの面々がユーモアなちょい役で笑いを誘うのもご愛敬だ。とりわけ、コンビニに納品を運ぶトラック運転手・六木(通称・ロッキー)役の大泉洋は、お調子者ながらも物語を引っ張るキーパーソンを好演。 私が好きなのはオープニングで、深夜、運転中のロッキーが聴いているラジオの曲が、これから登場する人物たちの日常をつなぐ展開にわくわく。しかも劇中のラジオDJは、道内のFM放送局で長くパーソナリティを務めた鈴井氏本人の声で、高校時代リスナーだった私は懐かしい気持ちにさせられる。
キャスティングでまた見逃せないのが、謎の夜勤店員を演じる西島秀俊だ。朴訥としながらも、どこか超然とした雰囲気を醸し出し、このほのぼのとした物語にスパイスを効かせる。余談だが、彼が主演し国内外で高評価を受けた映画「ドライブ・マイ・カー」(2021年)にも、北海道シーンが後半登場! ロケ地は鈴井監督の故郷・赤平で、不思議な縁を感じた。
映画のタイトルは、森永製菓の定番商品「チョコボール」の“くちばし”についた当たりマークのこと。劇中ではスナックのママ(山口もえ)がコンビニで毎回買い求める。当たりを期待するものの、どれを買うかは他人に決めてもらう彼女に、西島はこう問い掛ける。
「自分で選べば、後悔しないのでは?」。
5枚集めるのは至難の業。なかなかそろわない「銀のエンゼル」を〝幸せ〟と置き換えると、西島のセリフは、ままならない人生を生きる私たちへのメッセージのようでもある。
ところで、半世紀以上発売されている「チョコボール」のエンゼルマークに期限はないそうだ。私も久しぶりに買ってみようかな。

イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。鈴井貴之氏が手掛ける演劇プロジェクト「OOPARTS」の第6弾作品「D-river」を先月鑑賞。人間とAIの共存を問う、シニカルだけれど笑えるコメディー。HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」では主人公・雪丸に振り回されっぱなしの上司役で印象に残る俳優・大内厚雄さんも出演され、エキセントリックな演技を披露されました。札幌で行われた千秋楽の舞台挨拶で鈴井氏は「またいつか!」と次作への意欲をみせ、客席を大いに沸かしていましたが、北海道ロケ映画の新作もぜひ!