1975年(監督:山田洋次)
ロケ地:函館、札幌、小樽

寅さんファンにとって、2024年は楽しい年だった。なぜなら「男はつらいよ」第1作の劇場公開から55周年となり、「Go!Go!寅さん」と題したプロジェクトが始動。シリーズ作品の劇場上映やテレビ放映、イベント、コラボグッズなど話題が盛りだくさんだったのだ。そこで、本コラムでも全50作(北海道ロケ8作)の中から1本をピックアップ。第15作「寅次郎相合い傘」だ。
第11作「寅次郎忘れな草」(2019年1月号の本コラム第1回でご紹介)のマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)が再登場する本作。前回、寅次郎(渥美清)が旅回りの歌手・リリーと出会ったのは網走の街角だったが、2年ぶりに再会する土地が、再びこの北海道というのがまず嬉しい。夜の函館・ラーメン屋台で偶然顔を合わせ、喜んで手を握り合った瞬間から、寅さんとリリーは息ぴったり。愉快な北海道旅が幕を開ける。
この時、寅さんには連れがいた。東京のサラリーマン生活からドロップアウトした兵頭(船越英二)だ。JR函館本線の駅舎で寝たり、札幌の大通公園でひと芝居売ったり(笑)。夏の北海道を気ままに渡り歩く3人が向かったのは、小樽。初恋の人がいることから「30年間夢に見た町ですよ」と感激する兵頭に対し、「そんなにいいかね」と寅さんは苦笑い。目線の先には、埋め立て工事前の小樽運河が映る。
そうして初恋の人に会いに行ったものの、どこか煮え切らない兵頭。彼の態度をきっかけに、「女の幸せ」で揉める寅さんとリリーは、売り言葉に買い言葉でケンカ別れしてしまう……。
寅さんの足跡をたどり、私が小樽市内のロケ地を巡ったのは、もう10年前のこと。3人が汗をかきかき上った石段やケンカ別れした小樽港の埠頭など、映画の面影を見つけるたび、満面の笑みを浮かべたものだ。
その後、札幌・大通公園の撮影に立ち会った男性にもお会いした。「渥美さんは静かな雰囲気でしたが、撮影が始まると一転、元気な演技を披露されていました」という言葉に、国民的映画の主人公を当たり役とした俳優のすごみを感じた。
さて、寅さんとリリーの物語は、第25作「寅次郎ハイビスカスの花」、第48作「寅次郎紅の花」へと続く。舞台は沖縄に移るけれど、2人が函館の思い出を懐かしむ場面があり、何度見ても胸が詰まってしまう。2019年公開の第50作「お帰り 寅さん」に、我らが寅さんは出てこない。けれど、リリーを愛した彼は、今もどこかを旅しているのだと信じながら、私はスクリーンを見つめていた。
ちなみに、55周年プロジェクトは2年掛かりで、今年12月31日まで実施中。短腹で惚れっぽくて情にもろい、寅さんから時々元気をもらいながら、この一年を過ごしたい。

文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。ご覧の方は言わずもがなですが、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」は後半、メロン騒動など名シーンの連続! 分かっていても笑って泣ける、これぞ名作です。「Go!Go!寅さん」プロジェクト、私はイラストレーター・いぬんこさんのイラストが可愛いビームス ジャパンのコラボTシャツを愛用しています。