2008年(監督:小泉徳宏)
ロケ地:札幌、小樽、深川ほか

ロケ地にこだわる私が言うのも可笑しいが、映画の魅力は俳優によるところも大きい。「ガチ☆ボーイ」は、主演した佐藤隆太の直球の演技が楽しめる1本だ。
私の佐藤隆太ファン歴は長い。何しろ高校生の頃、彼が俳優デビューした宮本亜門演出の舞台「BOYS TIME ボーイズ・タイム~つよく正しくたくましく!!」(1999年12月~2000年2月初演)をテレビで見て以来なのだ。明朗快活な好青年役を得意とし、無邪気な笑顔が持ち味の佐藤にとって、本作の主人公、学生プロレスに青春を賭ける五十嵐良一はまさにハマり役! 共演した向井理、仲里依紗ら今も活躍する俳優たちの若々しい姿も目を引く。
物語は、「北海道学院大学」のプロレス研究会に、入部希望の3年生・五十嵐(佐藤)が現れるシーンから始まる。前部長が引退して以来、試合は盛り上がらず、人気も低迷していた研究会のキャプテン・奥寺(向井)やマネージャーの朝岡(サエコ)らは喜んで受け入れたものの、彼はポラロイドカメラを片時も離さず、どんなことでもメモする、ちょっと変わった学生だった。
東京の劇団・モダンスイマーズが2004年に上演した「五十嵐伝~五十嵐ハ燃エテイルカ~」を映画化したそうだが、調べた限り、原作舞台は北海道と関わりないようだ。ということは、あえてロケ地をここに選んだはずだが、牧場や農家など北海道ロケにありがちなモチーフは出てこない。その分、緑豊かな北海道大学構内をはじめ、小樽都通り商店街など、地元住民には馴染み深い風景がふんだんに登場。撮影は全編、2007年7~8月、真夏の北海道で行われたそうだが、いわゆる〝観光映画〟とは違う、大学生・五十嵐の日常をきちんと描こうという意気込みが感じられる。
ちなみに、北大のほか、北海道文教大学、札幌国際大学、札幌大学、小樽商科大学、北海道工業大学(現・北海道科学大学)、酪農学園、とわの森三愛高校もロケに協力。どのシーンにどの学校が出てくるか、探してみるのも面白い。また、五十嵐の実家となった「深川湯」もかつて実在した銭湯だ。古めかしい佇まいが、銭湯の主人・泉谷しげる演じるぶっきらぼうな父親像と相まって、ストーリーに味わいを添えていた。
練習に人一倍熱心な五十嵐だったが、初試合で段取りを忘れ、研究会ではタブーとされたガチンコ勝負をして仲間を驚かせる。ところが、駆け付けた妹(仲)を通して明かされた彼の秘密は、さらに驚くべきものだった。彼がなぜ、突然学生プロレスにのめり込んだのか。その理由が分かった時、彼を取り巻く景色の見え方はガラリと変わってくる。一日一日、一瞬一瞬を前向きに生きようともがく五十嵐の姿は、閉そく感の漂う日々を乗り切るヒントかもしれない。
蛇足だが、本作を私が好きになった理由がもうひとつ。五十嵐がドロップキックの練習に励む場面で流れる曲は、ウルフルズの「暴れだす」。実は、先に触れた「BOYS TIME」は、ウルフルズのヒットナンバーを歌って踊るミュージカルだった! 力強くて温かい、トータス松本のあの歌声に包まれ、学生たちが夕焼け色に染まる風景は、この青春コメディの中でひときわ輝いて見えた。

イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。スポ根モノが苦手な私が、縁遠いプロレスの魅力を知ったのは、宮藤官九郎脚本×長瀬智也主演のテレビドラマ「俺の家の話」(2021年1~3月放送)でした。両コンビの過去作(池袋ウエストゲートパーク)で重要な役を演じた佐藤隆太もスペシャルゲストとして登場し、ファンの胸を熱くさせてくれました!