1959年(監督:斎藤武市)
ロケ地:

“マイトガイのアキラ”と聞けば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。日活黄金期の看板スター・小林旭の代表作であり、一世を風靡した「渡り鳥」シリーズの第1作。主人公はタイトルの通り、ギターを抱えて函館の街にふらり現れた風来坊の滝伸次(小林)。地元のボス・秋津(金子信雄)に雇われた彼は、秋津の娘・由紀(浅丘ルリ子)から好意を寄せられるも、秋津一味の悪巧みに巻き込まれ命を狙われてしまう…。
荒涼とした駒ケ岳を背に荷馬車に揺られて登場するオープニング、波止場での美女との出会い、ライバルとのガン・アクション、そして運命の決闘と、まさに荒唐無稽なストーリーが炸裂。なのに製作後60年を経た今も色褪せないのは、主人公をはじめ、純情可憐なヒロインや殺し屋・ジョージ(宍戸錠)らキャストの粋な魅力、そして度々挿入される小林旭独特の歌声(甲高い!)、さらには、まるで異国のように映し出される北海道の叙情的な景色によるところが大きい。颯爽と振る舞い、ケンカとなれば滅法強い主人公を見ていると、とにかく映画を楽しもう!という気分になる。
ちなみに、シリーズ第5作「大草原の渡り鳥」と第8作「渡り鳥北へ帰る」も北海道が舞台(前者のロケ地は道東、後者は函館)。どちらも流れ者の滝が地元の悪者を倒すという設定だが、“無国籍アクション”という宣伝文句も納得の痛快な展開が満載で、最後まで目が離せない。
「渡り鳥」は、私にとっては忘れられない出会いをもたらしてくれた作品でもある。函館で地元新聞の記者をしていた10年ほど前、函館ロケ映画に携わった住民にスポットを当てるという記事を連載し、このシリーズを取り上げたのだ。
取材したのは「渡り鳥」の冒頭、七財橋のたもとで小林旭に風船を売る屋台の店主が若き日の父だという兄妹や、ロケハンに協力した男性、「渡り鳥北へ帰る」にエキストラ出演したという人など。たとえば、父が出演した兄妹は撮影の様子を覚えていて、銀幕のスーパースター相手に物怖じしない父を幼心に「すごい」と思ったそう。封切後に家族で劇場に行き大喜びしたことを懐かしみ、函館で長く小間物店を営んだという父を偲んでいた。
たとえ映るシーンは一瞬でも、それぞれに物語があり、思い入れがある。それはフィルムに刻まれた風景や建物にも当てはまり、映画の出来とは別の特別な価値だと私は思う。このコラムで映画の思い出を募っているのはそんな理由から。投稿のコメントが増えるたび、私はその方の人生と映画が交差する瞬間を知り、胸が熱くなる。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ)
ZINE「映画と握手」を作る札幌在住のフリーライター。NPO法人「北の映像ミュージアム」スタッフ。これから楽しみな映画イベントは、「サーミの血」上映会(3月23日、札幌プラザ2・5)と「ゴジラvs札響~伊福部昭の世界~」(5月6日、札幌文化芸術劇場 hitaru)。